歯を磨いた直後は気にならないのに、しばらくすると戻っている。磨き方が足りないのだろうと考えて時間を延ばしてみても、変わった感じがしない。
においのもとは、歯に付いている汚れとは性質が違います。口の中で作られているもので、作っている相手と、その材料があります。落として終わる種類のものではないので、着色と同じ考え方では合いません。
磨いた直後は収まるのに、しばらくすると戻る
着色の場合、話は単純です。付いたものを落とせば、その分は減ります。落とし切れなかった分が残るだけで、放っておいて増える性質のものでもありません。
だから、落とす量を増やせば結果も変わります。磨く時間を延ばす、道具を足す、医院で落としてもらう。どれも同じ方向の対処で、量の話に還元できます。
においのほうは、少し事情が違います。磨いた直後は収まっても、時間がたつと戻ります。時間を延ばして磨いても、同じことが起きます。
ホワイトニングを考えている場合も、ここは分けておく必要があります。薬剤が相手にしているのは歯の内部の色素で、においのもととは別のものです。薬剤が何に向かっているのかはホワイトニングの仕組みで扱っています。
では、においのもとは何で、どこから来ているのか。
においのもとになっている物質
まず、正体からです。
口臭の大部分(80%以上)は口腔内の気体由来であり、その主要原因物質は揮発性硫黄化合物(VSC:Volatile Sulfur Compounds)である硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドです。
— 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の原因・実態」(山賀孝之・松本歯科大学 歯学部 公衆衛生学講座 教授/最終更新2019年12月18日)
引用では、それぞれの物質に添えられた化学式を省きました。
ここから2つのことが読み取れます。ひとつは、においの大部分が口の中から出ているという点。もうひとつは、その正体に名前が付いているという点です。
揮発性硫黄化合物と呼ばれ、3つの物質が示されます。同じ解説によると、このうち硫化水素とメチルメルカプタンの2つで約90%を占めます。
「口臭」という言葉は、においの印象をまとめて指します。ただし実際に出ているのは、名前の付いた物質です。ここが分かれ目になります。
作っている相手と、その材料
では、その物質はどこから来るのか。同じ解説が、続けてこう記しています。
これら揮発性硫黄化合物は、口の内に生息している嫌気性菌が唾液・血液・剥離上皮細胞・食物残渣中の含硫アミノ酸を分解・腐敗することで産生されます。
3つに整理できます。
| 作っている相手 | 口の中にいる嫌気性菌 |
| 材料 | 含硫アミノ酸(硫黄を含むアミノ酸) |
| 材料の出どころ | 唾液、血液、粘膜からはがれた細胞、食べかす |
ここで効いてくるのが、材料の出どころです。
食べかすは、口の中に入ってくるものです。減らすこともできます。ところが残りについては話が別です。唾液は出続けます。粘膜からはがれた細胞も、入れ替わりのなかで出続けます。どちらも、口の中から無くなるものではありません。
つまり、においのもとは付着物ではなく、材料が残っているあいだは作り出されていくものと考えられます。
磨いた直後に収まるのは、そのときにあった分が減るためです。しばらくすると戻るのは、材料が残っていて、また生み出されるためです。時間を延ばしても変わらなかったのは、落とす量の問題ではなかったことになります。
着色は付いたものなので、落とせばその分は減ります。においのもとは生み出されているので、落とすという操作だけでは終わりません。同じ「口の中をきれいにする」でも、相手の性質が違います。
作られている場所は、2つに偏っている
次に、どこで作られているかです。
産生部位としては、辺縁性歯周炎・口内炎・壊死性軟組織疾患・口腔癌などの疾患病巣、あるいは舌苔や貯留唾液があげられます。このうち歯周病・舌苔が原因のほとんどを占め、この両者では舌苔からの産生量の方が多いといわれています。
場所は複数挙げられていて、そのなかで歯周病と舌苔が原因の大半にあたります。
そして、この2つは並列ではありません。両者を比べると、舌苔から出る量のほうが大きいとされています。
舌苔は、舌の表面に付く白い苔状のものです。歯ではないので、歯を磨く動作では届きません。
原因の一覧を眺めても自分がどれに当たるか見えてこないのは、一覧が量の差を示していないためです。挙がっている場所ごとに、寄与の大きさが違います。
歯ぐきの状態については、重度の歯肉炎や歯周炎がある場合の扱いをホワイトニングを受けられない人が扱っています。
作られる量は、いつも同じではない
場所に差があるなら、量のほうはどうか。ここからは、もう一方の解説「口臭の治療・予防」を引きます。舌苔のつき方には個人差があり、同じ人でも時間帯や体調によって異なるというものです。そのうえで、こう続きます。
このような差がなぜ起こるのかはよくわかっていません。
— 厚生労働省 e-ヘルスネット「口臭の治療・予防」(山賀孝之・最終更新2019年12月18日)
なぜそうなるのかは、分かっていない部分として残されたままです。ただし、量が動く場面から推し量る形で、咀嚼や嚥下の活動、舌の運動、唾液の分泌量が関わっていると考えられています。
年齢については、先に引いた「口臭の原因・実態」のほうに記述があります。年齢が高いほどVSCの濃度は高い傾向にあります。もっとも、その濃度に寄与する他の要因の影響を除くと、年齢は有意でなくなるとされています。年齢そのものが効いているという整理にはなりません。
つまり、一定量が出続けているわけでもありません。条件によって上下しますが、作られること自体が止まるわけではないと考えられます。落として終わらないのは、そのためです。
増える原因によって、2つに分けられている
量が一定でないと分かったところで、もうひとつの分け方を見ておきます。同じ「口臭の治療・予防」では、次のように分けられています。
口臭はVSCが増える原因により、生理的口臭あるいは病的口臭に分けられます。
分け方の基準が、においの強さでも、出ている場所でもありません。基準になっているのは増える原因のほうです。ここまで見てきた「作られている」という捉え方と、そのままつながる分け方になります。
生理的口臭のほうは、原因のほとんどが舌苔にあたります。予防は、歯磨きに加えて舌を清潔に保つことになります。
病的口臭のほうは、何らかの病的な原因があって強くなるものを指します。その代表が歯周病です。理由もはっきりしていて、歯周病の原因の多くが、VSCを作る嫌気性菌であるためです。
においを作っている相手と、歯周病を起こしている相手が重なっている、という説明になります。歯周病が場所として数えられるのは、そこに菌がいるからというだけではありません。
歯周病はほとんど痛みもなく進むため、自覚のないまま人から指摘されて気づく場合もあります。
舌の清掃は、起床時の一回でよいとされている
ここで生理的口臭に話を戻します。「口臭の治療・予防」には、清掃の回数についての記載もあります。
一日の舌清掃の回数は、起床時の一回で結構です。それ以上行うと舌の粘膜を傷つけるおそれがあります。
回数を足していく方向のケアではない、という位置づけです。
ここも着色とは考え方が違うところです。着色なら落とす量を増やせばその分減りますが、舌の清掃については回数を増やす前提がありません。むしろ、増やすと粘膜のほうを傷めるおそれがあるとされ、舌に傷や潰瘍があるときは中止するよう添えられています。
清掃を起床時に行うことと、食事を規則正しくとってよくかむことも、併せて示されます。
歯の色をどう進めるかは、いまの状態を確かめたうえでの話になります。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
引いてきた記述は、どこまでを述べたものか
もとになった2つの解説が、何を対象にしたものかを見ておきます。
参照したのは、厚生労働省が運営する健康情報サイトの解説記事です。原著の研究論文ではありません。執筆は松本歯科大学の歯学部で公衆衛生学を専門とする教授で、最終更新は2019年12月です。
引いたのは同じ書き手による2つの解説で、「口臭の原因・実態」と「口臭の治療・予防」にあたります。口臭の定義と物質、場所、年齢と濃度の関係は前者、舌苔の説明と清掃、口臭の分け方は後者にあります。
年齢と濃度の関係について示されているデータは、1992年の調査に基づきます。対象は日本人2,672名(18歳から64歳)でした。
そして、どちらの解説もホワイトニングを扱っていません。ここまでの記述は口臭について書かれたもので、ホワイトニング中の状態について述べたものではありません。
あわせて、口臭は「口あるいは鼻を通して出てくる気体のうち、社会的容認限度を超える悪臭」と定義されています。においの有無ではなく、程度を含んだ基準が使われています。
ホワイトニングと口臭に関するよくある質問
食事を抜くと、においは減りますか
舌苔は、起床時や絶食時にかえって量が多くなる傾向があるようだとされています。食べない時間が長いほど減っていく、という向きにはなりません。
歯周病がなければ、においのもとは作られませんか
歯ぐきの状態だけで決まる話ではありません。原因として示されている場所はほかにもあり、そのうち2つが大半を占めます。しかもこの2つのあいだでも差があり、舌苔のほうが寄与は大きいとされます。
硫化水素とメチルメルカプタンでは何が違いますか
割合が違います。通常は硫化水素の割合が多くなります。ただし歯周病の患者では、メチルメルカプタンの割合が高くなることもしばしばあります。どちらも揮発性硫黄化合物にあたります。
口の中以外に原因があることはありますか
あります。ただし全身の状態が関わる呼気経由のものについては、極めて限定的と考えてよいと思われる、と記されています。大部分は口の中から出ているという位置づけです。
歯の色について何から始めるかは、一度診てもらうと道筋が見えてきます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
まとめ
口臭という言葉でまとめられているものには、名前の付いた物質があります。揮発性硫黄化合物という名前が付いていて、3つのうち2つで約90%にのぼります。
この物質を作っているのは、口の中にいる嫌気性菌です。材料は硫黄を含むアミノ酸で、その出どころは唾液や、粘膜からはがれた細胞。どちらも、口の中にあり続けるものです。
だから、いったん減らしても、しばらくすれば元の水準に近づきます。付いたものを落とすという操作では終わらないためです。歯の着色とは、扱っている相手の性質が違います。
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・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
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