ホワイトニングを受けると、詰め物のある部分だけ色が取り残されます。この差は、自分の歯が明るくなった分として受け取られることが多いところです。
ただ、その見方だけだと、作り直すかどうかを考えようとしたときに材料が増えません。差の大きさも、いつ判断すればよいのかも、そこからは出てこないためです。
見落とされているのは、詰め物の側です。詰め物に使われる材料のうち、飲食物で着色するものがあります。薬剤で明るくならないことと、色がまったく動かないことは、同じではありません。
では、いま見えている差はどこから来ているのか。ここを分けて見ると、作り直しを考えるときの材料が増えます。
明るくなる側と、ならない側
薬剤が働きかけるのは天然歯の内部です。詰め物は素材そのものが色を持っているので、この作用の対象になりません。
受けられないという話ではなく、その部分だけが取り残される、という関係です。使ってはいけない条件を並べた欄にも、詰め物は挙がっていません。そこに何が並んでいるかはホワイトニングができない人と、できない歯は別にあります。
そのうえで色を揃えたい場合、どんな手があるかはインプラントがある人のホワイトニングで整理しました。人工物という点では詰め物も同じ扱いになります。治療の途中の歯があるときの進め方は虫歯があるとホワイトニングはできない?にあります。
ここまでが、詰め物のある人に向けて一般に案内されている範囲です。どれも「詰め物の色は動かないもの」という前提の上に組まれています。ここから見ていくのは、その前提のほうです。
では、詰め物の色は動かないのか
ここからが本題です。薬剤で明るくならないことは、色が固定されていることを意味しません。
詰め物によく使われる材料に、コンポジットレジンがあります。この材料の着色を調べた研究があります。間奈津子ほか「研磨後のコンポジットレジンの表面粗さがその後の着色に及ぼす影響」です。日本歯科保存学雑誌の56巻6号(2013年)に掲載されています。
試料をコーヒーと赤ワインにそれぞれ4週間浸し、そのあとの色を測るという方法です。
測っているのは見た目の印象ではありません。抄録によれば、微小面分光色差計という機器で測色し、L\*a\*b\*表色系という枠組みで評価しています。色の違いを数値として扱ったうえでの比較です。
結論は次のように書かれています。
コーヒーと赤ワインではコンポジットレジン表面の着色程度は大きく異なったが,同一種類の色素では着色の程度に表面粗さの違いによる差は認められなかった.
— 間奈津子ほか「研磨後のコンポジットレジンの表面粗さがその後の着色に及ぼす影響」日本歯科保存学雑誌 56巻6号 617-622頁(2013年)
ここから分かるのは、コーヒーや赤ワインのような色の濃いものに対して、コンポジットレジンが着色するということです。そして、何に浸したかで着色の程度が大きく違っていました。
後者は、詰め物の側の色を考えるときに効いてきます。同じ材料でも、何に触れるかによって着色の程度が変わるということだからです。色の濃いものをまとめて1つに扱えない、ということでもあります。
ただし、この結果を自分の詰め物の話として読むには、いくつか断りが要ります。
これはホワイトニングの研究ではありません。歯面の清掃に使う研磨材の影響を調べたものです。
使われたのは1種類の製品です。コンポジットレジンにはいろいろな製品があり、すべてが同じように振る舞うとは書かれていません。
試料は円柱状に成形したもので、口の中の詰め物ではありません。そして37℃に保った環境で、4週間続けて色素の液に浸すという条件です。口の中で同じ速さで進むという話ではありません。
確かめられているのは、この材料が着色する性質を持っているというところまでです。何年でどのくらい、という話にはなりません。
表面をなめらかにしても、着色のしやすさに差は認められなかった
同じ研究には、もうひとつの結果があります。
試料の表面は、研磨に使うペーストを変えて状態を変えてあります。抄録によれば、用いた研磨ペーストのRDAが高いものから低いものになるに従い、凹凸に変化があったとされています。原文の言い方では「表面に形成された凹凸が減少していることが観察された」です。表面の状態は、実際に変わっていました。
それでも、同じ色素に浸したときの着色の程度には、統計学的な有意差が認められませんでした。
つまりこの試験の範囲では、「なめらかに磨いておけば色が付きにくい」という関係は確かめられなかったことになります。表面の凹凸に色素が入り込む、という見方だけでは説明がつかない部分がある、ということです。
なお、これは磨く工程に意味がないという話ではありません。この研究が見ているのは着色への影響だけで、ほかの目的については扱っていません。また、すでに付いた着色が磨いて落ちるかどうかも、この研究は調べていません。研磨は着色させる前の処理として行われています。
差は両側から開いている
ここまでを合わせると、色の差の見え方が変わります。
天然歯は、薬剤で明るくなります。同時に、飲食物によって着色もします。この2つは別の話で、着色のほうは落とせる部分です。仕組みは歯の黄ばみを取る方法に、何が着色に関わるかはホワイトニング後の食事にまとめました。
一方、コンポジットレジンの詰め物は、薬剤では明るくなりません。ただし着色はします。
そう考えると、いま見えている差は、自分の歯が黄ばんだ分だけではありません。詰め物の側にも、口にしてきたものの分が混じっている可能性があります。
ただし、それがどのくらいなのかは、この研究からは出てきません。測ったのは4週間の浸漬という条件でのことで、口の中で何年たてばどうなるかを示したものではないためです。何を口にしてきたかでも変わる部分です。
それでも、入れたときの色のままとは限らないというところは押さえておけます。ここが、差の原因を片側だけで見ているときとの違いです。自分の歯が明るくなる分だけを考えていると、対処も「詰め物を作り直す」の一つになります。両側が動いていると分かれば、いま差がどのくらい開いているのかを、まず確かめるという段取りが先に来ます。
作り直しは、一度きりの解決ではない
差が気になる場合、天然歯の色に合わせて詰め物を作り直すという方法があります。
ただ、作り直した詰め物がコンポジットレジンであれば、そこからまた同じことが始まります。入れた時点で色を合わせても、そこから離れていくわけです。
しかも、動くのは詰め物の側だけではありません。天然歯の明るさも戻ります。合わせた色は、その時点のものになります。
そう考えると、作り直しの意味が変わります。差を消してしまう処置ではなく、そのときの色に合わせ直す処置です。一度合わせたら終わり、というものではありません。
そのため、作り直すかどうかを決めるときに見るのは、いま差がどのくらいかだけではなくなります。合わせたあとをどう考えるかも、同じ判断のなかに入ってきます。
なお、作り直すかどうか、費用や期間がどうなるかは、詰め物の状態と位置で変わります。治療を受けた医院で確かめる項目です。
薬剤で明るくなるのがどこまでで、どこが変わらないままなのかは、口の中の状態によって変わります。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
素材によって事情が違う
ここまで見てきた研究の対象は、コンポジットレジンです。
詰め物や被せ物には、ほかの材料もあります。セラミックを使ったものは変色しにくいとされる素材です。金属のものは、そもそも色を合わせて入れるものではないので、扱いが別になります。
自分の詰め物が何でできているかは、見た目だけでは分かりにくい部分です。白い詰め物であればレジンかセラミックかという違いがあり、どちらなのかは治療したときの記録で確かめられます。
薬剤で明るくならないという点は、どの素材でも同じです。違ってくるのは、そのあと色が動くかどうかのほうです。作り直したあとに何が起きるかも、ここで変わります。
そして、どの素材がよいという話ではありません。詰め物を何にするかは、歯の状態や場所によって決まる部分です。色の動き方は、そうやって決まったものに後から付いてくる性質にあたります。
関わるのは、自分のものがどういう性質を持っているかという一点です。
ホワイトニングと詰め物に関するよくある質問
銀歯がある場合はどうなりますか
金属も薬剤では色が変わりません。ただ、白い詰め物とは事情が違います。白い詰め物は周囲の歯に色を合わせて入っているので、周りが明るくなると、合っていたものが合わなくなるという形になります。金属はもともと色が揃っていないため、そこは起こりません。
ただし、周囲が明るくなる分、明暗の差そのものは変わります。色を揃えたいという話であれば、素材を替えるかどうかという別の検討になります。そこは治療を受けた医院の範囲です。
前歯に詰め物があります。何から確かめればいいですか
材料からです。位置は見え方を決めますが、色がこの先どう動くかのほうには、材料が関わります。前歯にあると差が見えやすい分、確かめる優先度は上がります。ただし確かめる順としては、位置ではなく材料が先です。記録で材料を確かめたうえで、いまの差がどのくらいかを見てもらう形になります。
詰め物の色は自分で確かめられますか
鏡で見て差が気になるかどうかは分かりますが、それがいまどの明るさなのかを自分で決めるのは難しい部分です。詰め物の色と周囲の歯の色を見てもらう項目として挙げておくと、話が早く進みます。
詰め物を先に作り直してからホワイトニングをするのはどうですか
先に作り直すと、その色が基準になります。そのあと天然歯を明るくすれば、また差が開きます。詰め物側は薬剤で追いつけないためです。治療する歯がある場合の組み方は虫歯があるとホワイトニングはできない?にあります。
進め方を自分の状態から決めたい場合は、まず相談するところからです。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
まとめ
詰め物の色は、薬剤では動きません。ただし、薬剤で明るくならないことと、色が止まっていることは別です。
コンポジットレジンについては、コーヒーと赤ワインに浸した試験で着色が測定されています。何に浸したかで程度が大きく違い、表面をなめらかに研磨しても着色のしやすさには有意差が認められませんでした。ホワイトニングの研究ではありません。1種類の製品を4週間浸したという条件なので、そのまま自分の詰め物に当てはめられるものでもありません。
そのうえで言えるのは、いま見えている差が自分の歯の側だけから来ているとは限らない、ということです。詰め物が入れたときの色のままだという前提は、材料によっては成り立ちません。
作り直す場合も、合わせた状態が続くわけではありません。両側が動くという前提で、そのあとをどうするかまで含めて相談する話です。
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・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

