冷たいものがしみることがある。奥歯に詰め物が入っている。検診でむし歯を指摘されたまま来ている。そういう心当たりがあると、受けられない人の一覧を見たときに、いくつか当てはまる気がしてきます。
一覧では、対象の違う項目が同じ並びに置かれています。そのため、1つでも当たると全部だめなように見えます。
ただ、ある自宅用の2製品について製造元が公開している禁忌では、項目が「患者」と「歯」に分けて書かれています。歯のほうに置かれているのは、その歯についての記載です。その人が受けられないという意味ではありません。
以下、その原文をたどります。
禁忌は「人」と「歯」に分けて書かれている
株式会社ジーシーは、自宅用の2製品について禁忌と禁止事項を公開しています。「ティオン ホーム ウィズ」と「ティオン ホーム プラチナ」です。その欄には次のように書かれています。
下記の患者には本品を使用しないこと。
無カタラーゼ症の患者[過酸化物を分解できない]/妊娠中,授乳期女性/小児/重度の歯肉炎や歯周炎を有する患者[症状を悪化させる可能性]/ポリオレフィンに対し、アレルギー反応が見られる患者
下記の歯に本品は使用しないこと。[症状を悪化させる可能性]
健全でない歯(う蝕、くさび状欠損、咬耗症、クラック等)/知覚過敏を有する歯
本品は就寝中に使用しないこと。 本品を用いてウォーキングブリーチ法を行わないこと。 本品を用いて髄室内からの漂白を行わないこと。
— 株式会社ジーシー「医療ホワイトニングに関するよくあるご質問」(ホームホワイトニング製品について)
このうち、対象を示す見出しが2つあります。「下記の患者には本品を使用しないこと。」と「下記の歯に本品は使用しないこと。」です。並べ直されるとき、この区別は落ちます。同じ列に置かれると、どれも「受けられない人の条件」に見えるためです。
項目ごとに書き方も違います。理由が角括弧で添えられているものと、添えられていないものがあります。添え方も、項目ごとのものと、見出しにまとめたものがあります。
| 項目 | 何に付いているか | 添えられた理由 |
|---|---|---|
| 無カタラーゼ症 | 患者 | [過酸化物を分解できない] |
| 妊娠中,授乳期女性 | 患者 | なし |
| 小児 | 患者 | なし |
| 重度の歯肉炎や歯周炎 | 患者 | [症状を悪化させる可能性] |
| ポリオレフィンにアレルギー反応 | 患者 | なし |
| 健全でない歯(う蝕、くさび状欠損、咬耗症、クラック等) | 歯 | [症状を悪化させる可能性](見出しにまとめて付記) |
| 知覚過敏を有する歯 | 歯 | 同上 |
この記載は、あくまで2製品について定められたものです。ほかの製剤や、医院で受ける方法には、それぞれの記載があります。自分が使うものについては、その製品のものを見ることになります。
歯のほうに書かれていること
歯の側の「健全でない歯」には、括弧のなかにう蝕、くさび状欠損、咬耗症、クラックが挙げられています。う蝕はむし歯を指します。くさび状欠損は歯と歯ぐきの境目がくさび形に欠けた状態、咬耗症は噛み合わせによってすり減った状態、クラックはひびのことです。
う蝕もクラックも、原文はその歯に使わないという書き方をしています。人の側の条件としては置かれていません。
ここで気になるのが、該当する歯が1本あったときに、口全体が止まるのかどうかだと思います。禁忌に書かれているのは、その歯に使わないというところまでです。1本あったときに全体をどう進めるかまでは、そこには書かれていません。実際の進め方は、その歯をどうするかとあわせた話になります。むし歯がある場合の順番は虫歯があるとホワイトニングはできない?で扱っています。
なお、詰め物や被せ物は、歯の側にも人の側にも名指しでは出てきません。並びに混ざる理由が別にあるので、後ろの見出しで扱います。
もうひとつの「知覚過敏を有する歯」については、補足があります。ホワイトニングの知覚過敏は歯が傷んだのではないでは、もともと知覚過敏がある場合を「受けられないとは限りません」としています。ただし、原因への対処を先に行うことが前提に置かれています。
禁忌が線を引いているのは、あくまで歯の状態のほうです。過去にしみた経験そのものが条件になっているわけではありません。
人の側は、条件の書き方がそろっていない
まず歯肉炎や歯周炎です。ここには「重度の」という限定が付いています。歯ぐきが腫れている、磨くと血がにじむ。そうした自覚があるとこの項目に当たると考えがちですが、原文の線はそこに引かれていません。自分の状態がどちらなのかは、見てもらったうえで決まります。
妊娠中・授乳期についても、原文が示しているのは時期の線だけです。理由も、その先の扱いも書かれていません。
年齢のほうは、そもそもどこに線が引かれるかが製品や提供する側によって違います。歯の成熟度と提供側の設定の両方で決まる部分なので、高校生はホワイトニングを受けられる?で分けて扱いました。
残る2つは、無カタラーゼ症とポリオレフィンへのアレルギーです。ここに置かれているのは疾患名と物質名で、ほかの3つのような状態や時期の書き方にはなっていません。それぞれ次の見出しから扱います。
なお、受けられない条件を「もう変わらないもの」と「時期や治療で変わるもの」に整理した見方は、ホワイトニングはしない方がいい?にあります。そちらは製品を限定せずに扱っているので、範囲の取り方が違います。
禁忌には一行しか書かれていない ― 無カタラーゼ症
無カタラーゼ症に添えられているのは、[過酸化物を分解できない]という一行だけです。自分がそうでないと確かめる手立てまでは、そこには書かれていません。
この疾患には、診断の基準があります。難病情報センターが「ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィーを除く)」という指定難病のなかで公開しているものです。アカタラセミア(無カタラーゼ血症)として掲載され、独立した診断基準が置かれています。
以下は、その疾患そのものの臨床像として、医療従事者向けの診断・治療指針に書かれている内容です。症状については、次のように記載されています。
多くは幼少期に歯肉部に発症する口腔壊疽を特徴とする。進行性で歯肉辺縁の潰瘍から歯周組織全般の壊疽、骨壊死にまで進行する重症例から、歯槽膿漏程度の軽症例まである。近年では口腔環境の改善や抗生物質の普及により、発症は減少傾向にあると考えられている。また皮膚においては過酸化水素の塗布、付着による黒化で気づく場合もある。
— 難病情報センター「ペルオキシソーム病(副腎白質ジストロフィーを除く)(指定難病234)」
検査については、こうあります。
血液が過酸化水素で黒褐色に変わることよりも可能だが、血液中のカタラーゼ活性を測定することによる。ほとんど認めなければアカタラセミア、50%程度、残存していればヒポカタラセミアと診断される。
— 同上
活性がほとんど認められない場合と、50%程度残っている場合が区別され、後者にはヒポカタラセミアという別の名前が付いています。あるかないかの二択で書かれてはいません。なお、禁忌のほうに書かれているのは「無カタラーゼ症の患者」です。中間の状態がどちらに入るかは、禁忌の欄からは読み取れません。
同じ診断基準には、鑑別すべき疾患として進行性壊疽性口内炎と歯槽膿漏が挙げられています。遺伝学的検査としては、catalase遺伝子の病原性変異が置かれています。診断が確定するのは、症状と血中カタラーゼ活性の低下がそろった場合か、この遺伝子変異が同定された場合だとされています。
つまり、判定には検査の裏づけが要ります。心当たりの有無で決まるものではありません。
なお、症状として書かれているのは「多くは幼少期に」であって、同じ記載のなかに軽症例もあると示されています。幼少期に何もなかったことが、そのまま否定の根拠になるわけではありません。
気にかかったのであれば、心当たりを探しにいくところではありません。診断の基準がある疾患だ、というところで止めておけます。過去に指摘を受けたことがあるなど、気になる点があれば、伝えたうえで判断してもらう形になります。
一覧には出てこない項目もある
人のほうにもうひとつ、ポリオレフィンに対してアレルギー反応が見られる患者という項目があります。
この項目は、並んでいる一覧のなかには出てきません。そしてそれが何を指すのかは、この記載のなかには書かれていません。
ここに、一覧というものの限界があります。禁忌は製品ごとに定められているため、一般的な一覧をいくつ並べても、自分が使うものの禁忌にはたどりつきません。この項目のように、そこに入っていない条件が製品側に置かれていることもあります。
そして、アレルギーのように自分の側の事情が関わる項目は、伝えないかぎり相手には分かりません。むし歯や歯ぐきの状態なら見れば確かめられますが、こちらは口の中を見ても出てこない情報です。何かにアレルギーがあるなら、その内容を先に伝えておく項目になります。
禁忌ではないのに一覧に混ざるもの
ここまで見てきたのは禁忌の欄です。一覧に並ぶ項目のなかには、この欄に由来しないものもあります。人工物と、薬剤への反応が弱い変色です。
歯に入っている人工物は、薬剤の作用を受けません。被せ物や差し歯、インプラント、そして詰め物も同じです。使ってはいけないという話ではなく、作用する相手かどうかの違いです。人工物との関係はインプラントとホワイトニングで扱っています。
反応が弱いほうは、原因で分かれます。抗菌薬の影響による変色についてはテトラサイクリン歯のホワイトニングにまとめました。神経を失った歯の変色はウォーキングブリーチの値段で扱っています。
いずれも受けること自体は妨げられていません。ただし、人工物の色は薬剤では動かず、反応が弱い変色は動き方が限られます。
自分の口の中でどこまでが対象になるかは、見てもらうと決まります。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
ホワイトニングができない人に関するよくある質問
授乳が終われば受けられますか
妊娠中・授乳期は人のほうに置かれた項目です。時期が過ぎたあとの扱いは、製品を限定しない一般の話としてホワイトニングはしない方がいい?で触れています。ただし、それで残りの項目がすべて片づくわけではありません。歯のほうの項目は別に確認することになります。しばらく歯科に行っていないなら、口の中の状態から見ていく順番です。
無カタラーゼ症かどうかは健康診断で分かりますか
確定とされるのは2通りで、いずれも一般的な健診の項目とは限りません。受けた健診の内容を確かめることになります。気になる場合は、その点を歯科で伝えて相談してください。
しみることがありますが、これだけで断られますか
しみる感覚に関わる項目は、歯のほうに置かれています。書かれているのは「知覚過敏を有する歯」であって、しみたことがある人ではありません。前もって伝えておくと、そこを含めた進め方になります。詳しくはホワイトニングの知覚過敏は歯が傷んだのではないにあります。
一覧の項目に当てはまらなければ受けられますか
当てはまらないことと、受けられることは同じではありません。禁忌は製品ごとに定められたもので、口の中の状態はそこからは決まりません。歯ぐきやむし歯の状態は、痛みが出る前の段階でも進んでいることがあります。
心当たりの項目をどう扱うかは、状態を見たうえで相談できます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
まとめ
ここで見た2製品の禁忌は、対象を分けて書かれていました。う蝕やクラック、知覚過敏は歯の側です。心当たりが歯の側にあるなら、書かれているのはその歯の状態であって、その人についてではありません。
人の側の5つは、書き方がそろっていません。理由の括弧が付くものと付かないもの、「重度の」のように程度が限定されているものが混ざっています。並べ直されると、この差が見えなくなります。
無カタラーゼ症には診断の基準がありました。思い当たるかどうかで決められる項目ではありません。
そして、この2製品には、一般の並びには出てこない条件が置かれていました。ここで見た項目が、そのまま自分の使うものの禁忌とは限りません。
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・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

