むし歯はほとんどないし、歯みがきもさぼっていない。それでも歯の色が濃い。子どものころから言われてきたし、親も同じような色をしている。ここまで来ると、汚れではなく「もともとそういう歯なのだ」という結論に落ち着きます。
そのうえで気になるのが、ホワイトニングを受ける意味があるのかどうかでしょう。先に結論を書きます。生まれつきかどうかは、薬剤が効くかどうかを分ける線になっていません。効きにくさは、別の場所で分かれています。
薬剤が相手にしているのは、まさにその色のほう
まず、2つの作業を分けます。歯の表面に付いたものを落とす作業と、歯そのものを明るくする処置。この2つは、相手にしているものが違います。
前者は、外から付いた着色を取り除く作業です。何が付いて何が付かないのかは落とせる着色のほうで整理しました。
後者、つまりホワイトニングの薬剤がはたらきかけるのは、歯そのものが持っている色です。表面のものを落として本来の色に戻すのではなく、その本来の色を明るくする側にあたります。作用のしかたは薬剤が向かう相手が扱っています。
ここで、話が反転します。「もともとそういう歯だから対象外」と考えていたその色は、落とす作業の対象外であるだけです。明るくする処置のほうでは、その色こそが相手にあたります。
汚れではないと分かったことは、諦める材料ではありません。どちらの処置の話をしているのかが、そこではっきりしたというだけです。
効きにくいとされるものは、生まれつきとは限らない
とはいえ、ホワイトニングが届きにくい場合があるのも確かです。ただ、そこに並ぶものを見ていくと、生まれつきかどうかで分かれてはいません。
| 届きにくいとされるもの | いつからあるか |
|---|---|
| 詰め物・被せ物・差し歯などの人工物 | 生えたあと(治療で入れたもの) |
| 神経を失った歯 | 生えたあと(治療や外傷のあと) |
| 歯が作られる時期の薬の影響 | 生える前 |
3つ目だけが「生える前」で、あとの2つは「生えたあと」。時期はそろっていません。それでも同じ欄に並ぶのは、時期ではなく、色が何でできているかで分かれているからです。
つまり、線は「いつからあるか」ではなく「何が色を作っているか」に引かれています。生まれつきという言葉は前者しか答えていないので、この線をまたげません。
各論はそれぞれの回にあります。人工物については人工物がある場合の考え方で、順番の組み方まで含めて整理しました。
自分の場合はどれに当てはまるのか。ここは口の中を見てもらうと分かれてきます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
「生まれつき」は、いつからかの見立てでしかない
もうひとつ、手前の話をします。そもそも生まれつきなのかどうかが、確かめられていない場合があります。
根拠になっているのは、たいてい次のどちらかです。
子どものころから濃かったという記憶。 ただ、当時の色と今の色を並べて見たわけではないはずです。歯の色は年齢とともに変わっていくもので、その進み方はゆるやかです。ゆるやかな変化は、毎日見ている側からは気づきにくくなります。「ずっとこの色だった」という感覚は、変わらなかったことの裏づけとしては弱いところです。
まわりの人と比べた記憶。 こちらは相手の条件が分かりません。何もしていない人と比べたのか、そうでないのか。ホワイトニングを受けている人やクリーニングに通っている人が混ざっていれば、比べた相手の色は「手を入れたあとの色」です。自分の色が濃いというより、比較の相手が動いていたという場合があります。
どちらの記憶も、色が濃いこと自体は伝えています。抜けているのは、それがいつ、何によってその色になったのかのほうです。ここが空いたままだと、効くかどうかの見当を立てられません。
歯が作られる時期に決まったことは、あとから見えてくる
ここに、見落とされやすい仕組みがあります。歯の色のうちには、原因が終わったあとで初めて見えるようになるものがあります。
歯が作られている時期の出来事は、歯ぐきの中で起きます。その歯が口の中に出てくるのは、しばらく経ってからです。原因がはたらいていた時点と、それが目に見える時点が、時間をおいてずれることになります。
この関係を明確に書いている資料があります。国立保健医療科学院のフッ化物応用研究会が公開しているFAQで、歯のフッ素症について次のように説明されています。
歯牙フッ素症は歯が萌出してからでないと明らかにはなりません。歯牙フッ素症は歯肉のなかで歯が作られている間に起こるので歯が生えてから発症するものではありません。
— 国立保健医療科学院 フッ化物応用研究会「歯牙フッ素症とは?」(原典: American Dental Association『Fluoridation Facts』1999年/訳: 山下文夫・川崎浩二ほか)
3つ断っておきます。これは米国歯科医師会の資料を翻訳して掲載しているものです。訳者と掲載元は上記のとおりです。そしてここで取り上げるのは、いつ起きていつ見えるかという時期の記述だけです。フッ化物の使い方をどう考えるかには触れません。
「思い当たることがない」は、可能性を消さない
この時期のずれには、続きがあります。
歯が生えそろったあとに起きたことは、本人の記憶に残ります。濃い飲み物をよく飲むようになった、治療を受けた、ぶつけた。心当たりとして挙げられるのは、この範囲のものです。
一方、歯が作られていた時期の出来事は、そもそも記憶の外にあります。当時のことを覚えている人はまずいませんし、覚えていたとしても、歯ぐきの中で何が進んでいたかは見えません。
そのため、「思い当たることがない」という感覚は、生える前の可能性を消さないまま残ります。心当たりがないから生まれつき、という筋道は、ここで一段抜けています。
そして、生える前に決まったものの中には、効きにくいとされるものが含まれます。そのころに服用した薬の影響がその例にあたり、扱いは歯が作られる時期の服用にあります。心当たりの有無で線を引くと、この可能性が最初から候補から外れてしまいます。
市販品で変わらなかったことは、判断材料になりにくい
「生まれつきだから無理」という結論を裏づけているものとして、市販品を試した経験が挙がることがあります。歯みがき粉を長く使ったが変わらなかった、というものです。
ただ、ここは切り離して考える部分です。市販の製品と歯科医院で扱うものとでは、扱える成分が違います。届く範囲も同じではありません。この線引きは市販品と歯科で扱えるものにまとめてあります。
つまり、市販品で変わらなかったことが示しているのは、その製品で届く範囲に原因はなかったという一点です。歯の内側の色にはたらく処置を試した、という話にはまだなっていません。
同じ形の裏づけが、もうひとつあります。クリーニングに通ったのに色が変わらなかった、という経験です。
こちらも、示していることは限られています。クリーニングで扱うのは表面に乗ったもののほうなので、そこで動かなかったのであれば、濃さのもとは表面ではなかったと分かります。分かるのはそこまでです。明るくする処置がどうなるかは、この経験の外側にあります。
見方を変えると、この2つを済ませている人は、表面の側でできることをある程度まで試したあとの位置にいます。そこで動かなかったのであれば、残っているのは歯そのものの色のほうです。そちらが薬剤の相手にあたります。
どちらの経験も、諦める理由としては強く感じられます。ただ、まだ試していないものが残っているという点は、押さえておく価値があります。
確かめてもらうと分かること
では、何を見てもらえばよいのか。3つあります。
ひとつは、表面に落とせるものがどのくらい残っているかです。汚れではないと思っていても、実際に見てみるまでは分かれません。落とせる分があるなら、そこは先に減らせます。
もうひとつは、濃さが全体に行きわたっているのか、場所によって違うのかです。ここは見え方の話で、どこから来ている色なのかを考える手がかりになります。ただし、どちらだから何、という判定を自分でつける必要はありません。気になっている場所を伝えておけば足ります。
そして、いまの色から何がどのくらい動きそうかです。ここは歯の状態によって変わるため、一般的な数字を当てはめても見込みの代わりにはなりにくいところです。この見立て方はどこまで明るくできるかで扱っています。
費用の考え方
費用の目安も挙げておきます。
| 方法 | 一般的な費用の目安 |
|---|---|
| 医院で受ける施術 | 1回あたり 2万円〜5万円 |
| 自宅で行う方法 | 一式で 2万円〜5万円 |
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。本記事で示す金額はいずれも一般的な費用の目安であり、特定の医院の料金ではありません。
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります
金額を並べて比べるときの手順は費用のそろえ方で整理しました。
考え方としては、金額を見比べる前に、その色がどこから来ているのかを先に確かめるほうが材料は増えます。そこが空いたままだと、見合うかどうかを判断できないためです。
もともとの色がどこまで動きそうかは、診てもらうと絞れます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
生まれつきの歯の黄ばみに関するよくある質問
親も歯の色が濃いのですが、同じように白くならないでしょうか
家族と色が似ていることは珍しくありませんが、それだけで効き方までは分かれてきません。確かめられるのは自分の歯の状態のほうです。似ているという印象を診察のときに伝えたうえで、いまの色を見てもらう形になります。
子どものころから黄色かったのですが、それは生まれつきということですか
いつからあるかという問いと、何がその色を作っているかという問いは別ものです。生えてきた時点でその色だったのなら、きっかけは生える前にあったことになります。ただ、それが何かは見え方から絞る部分なので、診察で確かめる項目にあたります。
白っぽい斑点のような部分があります。これも生まれつきですか
濃さの話とは別に、見てもらう対象になります。ここで自分で判断をつける必要はありません。斑点や部分的な色の違いは白い部分の見分け方でも扱っているので、気になる場所を伝えるときの参考にしてください。
何もしないでいると、この色のまま保たれますか
保たれるとはかぎりません。加齢にともなって濃くなる向きに進むためです。いまの色を写真などで記録に残しておくと、あとから見比べたときに、動いているのかどうかを確かめられます。
まとめ
汚れではないと分かったとき、多くの方は「もう変えられない」という側に受け取ります。ただ、落とす作業と明るくする処置は別のもので、後者にとっては、その色こそが向き合う相手です。
届きにくいとされるものを並べても、生まれつきかどうかでは分かれていません。人工物や神経を失った歯は生えたあとの出来事で、薬の影響は生える前のこと。並びを決めているのは時期ではないわけです。
そして、生まれつきという見立て自体に裏づけがない場合もあります。歯が作られる時期に起きたことは、原因が終わったあとになって見えてくるためです。心当たりの有無は、そこを判定する材料になりにくいところです。
市販品やクリーニングで変わらなかった経験も、それぞれ別のことを示しています。まず確かめたいのは、いまの色のもとがどこにあるのかというところです。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

