施術を受けた直後は、はっきり白くなったと感じた。ところが数日たつと、少し戻ったように見える。効果がなかったのだろうかと迷っている方は少なくありません。
これには理由があります。ホワイトニングで白く見えるようになる仕組みは、2種類に分かれるからです。実際に色が変わる作用と、見え方が変わる作用。前者は残りますが、後者は数日で落ち着きます。ここでは、その2つと、時間差が生む現象を見ていきます。
前提 ― 歯の色はどう見えているか
仕組みの話に入る前に、歯の色がどう見えているかを確認します。
歯は1つの層でできているわけではありません。表面を覆う硬いエナメル質と、その内側にある象牙質。この2つが重なった状態として目に映っています。
エナメル質は半透明です。そのため、内側の象牙質の色が透けて見えます。そして象牙質は、もともと黄色みを帯びた色をしています。歯が黄色く見える理由の多くは、ここにあります。
なお、歯の表面に付いた着色は別の話です。こちらは歯そのものの色ではなく、外から付着したものです。この違いについては歯の黄ばみを取る方法で整理しています。
この構造が、これから見ていく2種類の作用を理解する前提です。どこまで明るくできるかという話はホームホワイトニングの効果はどこまで?で扱っています。
作用1 ― 色素を分解する
ひとつ目は、化学的な作用です。
ホワイトニングの薬剤の主成分は過酸化水素です。自宅で使う薬剤は過酸化尿素が代表的ですが、これは口の中で分解して過酸化水素に変わるため、最終的にはたらく物質は同じです。
この過酸化水素が歯に浸透すると、そこで分解が起こり、活性酸素と呼ばれる反応性の高い物質が生じます。この活性酸素が、歯の内部にある着色物質に作用します。
色のもとになっているのは、比較的大きな分子です。活性酸素はこれを分解して、より小さく無色に近い物質へと変えます。大きな分子は光を吸収するので色として見えますが、小さくなると光を吸収しにくくなり、色として認識されなくなります。
ここで押さえておきたいのは、歯を削っているのではないという点です。 表面を研磨して汚れを落としているのでもありません。歯の内部にある色素そのものを、化学的に変化させています。
表面を削る方法とはまったく別の作用であり、この違いは結果にも表れます。表面の着色を落とす方法では、歯そのものの色までは変えられません。
そして、この変化は残ります。分解された色素が元に戻るわけではないためです。
作用2 ― 見え方が変わる
ふたつ目は、歯そのものの色は変わっていないのに、白く見えるようになるという作用です。こちらは説明されないことも多い部分で、要因が2つあります。
光が乱反射する
薬剤が作用する過程で、エナメル質の表層の状態が一時的に変化するとされています。その結果、歯に当たった光が、それまでとは違う散らばり方をするようになります。乱反射と呼ばれる現象です。
光が散らばると、何が起きるか。内側の象牙質の色が、透けて見えにくくなります。
イメージとしては、すりガラスに近いものです。透明なガラスなら向こう側が見えますが、表面が細かく荒れたすりガラスでは、光が散って向こう側がぼやけます。同じように、エナメル質の表層で光が散ると、内側の黄色みが見えにくくなります。
ここで大事なのは、色素そのものは変わっていなくても、白く見えるようになるという点です。作用1とは性質がまったく違います。
そしてこの変化は、施術直後からはたらきます。薬剤を使った直後の歯が白く見えるのは、この部分によるところが大きいとされています。
乾燥によって白く見える
もうひとつの要因が、歯の乾燥です。
歯は水分を含んでいると色が濃く見え、乾いていると白く見えます。医院での施術中は、口を開けた状態が続くうえ、歯ぐきを保護する処置もあるため、歯の表面が一時的に乾いた状態になります。自宅で行う場合も、マウスピースを装着しているあいだは同じことが起きます。
そのため、施術やケアの直後に鏡を見ると、実際の変化より白く見えることがあります。時間がたって水分が戻ると、その分は落ち着きます。
これも歯の色そのものが変わったわけではありません。乱反射と同じく、見え方の側の話です。
2つは効いている時間が違う
ここが本題です。この2種類は、効いている期間が違います。
| 作用1:色素の分解 | 作用2:見え方の変化 | |
|---|---|---|
| 中身 | 活性酸素が色素を分解する | 光の乱反射と、歯の乾燥 |
| 効き始め | 施術中から | 施術中から直後 |
| 続く期間 | 持続する | 数時間から数日で落ち着く |
| 性質 | 実際に色が変わっている | 見え方が変わっている |
施術直後がもっとも白く見えるのは、この2つが重なっているためです。色素の分解による変化に、見え方の側の変化が上乗せされた状態といえます。
時間がたつと、乾いていた歯に水分が戻り、エナメル質の表層の状態も元に戻っていきます。すると上乗せされていた分がなくなります。残るのは、色素の分解による変化です。
つまり、施術後の数日で感じる「少し戻った」は、後戻りとは別の現象ということになります。
後戻りは、飲食物による着色が再び蓄積することと、加齢によって象牙質の色が濃くなることで起きるものです。こちらは数ヶ月から1年という単位で進みます。数日で起きる変化とは、原因も時間の尺度も違います。維持の考え方はホワイトニングの頻度は2段階で変わるで扱っています。
この時間差から、実務的なことも導けます。施術直後の色を基準にして判断しないほうがよい、ということです。詰め物の色を合わせる場合に、直後の色に合わせると落ち着いたあとにずれが出ます。この点は虫歯があるとホワイトニングはできない?で順番の設計として扱っています。
自分の経過が想定どおりなのかは、開始前の記録と見比べると分かります。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
医院で行う方法と自宅で行う方法は同じ仕組み
方法によって仕組みが違うのかというと、そうではありません。
自宅で使う過酸化尿素は、口の中で分解して過酸化水素になります。生じる過酸化水素の量は、もとの過酸化尿素の濃度のおよそ3分の1です。つまり、最終的に色素にはたらきかける物質は、どちらも同じです。
違うのは、濃度と作用させる時間の設計です。
医院で行う方法は、高い濃度の過酸化水素を短い時間だけ作用させます。濃度はおおむね15〜35%程度とされることが多く、1回あたりの変化が大きく出ます。
自宅で行う方法は、低い濃度を長い時間かけて作用させます。国内で使われている自宅用の薬剤は、過酸化尿素10%程度が代表的です。1日2時間程度の装着を続けるという設計です。
なお、医院での施術で光を当てることがありますが、これは薬剤の反応を促すためのものです。光そのものが歯を白くしているわけではありません。
それぞれの進め方はオフィスホワイトニングとは?とホームホワイトニングとは?で扱っています。
仕組みから分かる「白くならないもの」
仕組みが分かると、白くならないものの理由も説明がつきます。
人工物。 詰め物・被せ物・差し歯・インプラントは、天然の歯とは素材が違います。薬剤が分解する対象となる色素が、そもそも同じ形で存在しません。だから作用しません。
神経を失った歯。 この場合、変色は歯の内側から進んでいます。外側から薬剤を作用させる方法では届きにくいため、通常の進め方では期待どおりにならないことがあります。歯の内部から作用させる別の方法が検討されることもあります。
テトラサイクリンという抗菌薬の影響による変色。 歯が作られる段階で内部に取り込まれた色によるもので、外から付いた着色や、通常の象牙質の色とは性質が違います。そのため、反応の仕方も変わってきます。
加齢による黄ばみ。 年齢とともに象牙質の色が濃くなり、同時にエナメル質は薄くなります。薬剤が作用するのは主にエナメル質の側なので、象牙質側の色が濃く透けている場合は、変化が限られます。
いずれも「効かない場合がある」という結論だけでなく、仕組みのうえでそうなるということです。どこまで変えられるかはホームホワイトニングの効果はどこまで?で扱っています。
費用と、仕組みから見た進め方
費用の目安を挙げます。医院で行う施術は1回2万〜5万円程度です。自宅で行う方法は、マウスピースの作製と初回分の薬剤を合わせて2万〜5万円程度が一般的な目安とされています。
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。本記事で示す金額はいずれも一般的な費用の目安であり、特定の医院の料金ではありません。
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります
仕組みから言えることが2つあります。
ひとつは、1回で終わらない理由です。色素の分解は一度にすべてが進むわけではなく、段階的に進みます。だから複数回にわたります。
もうひとつは、間隔をあける理由です。薬剤が作用したあとの歯は、表層の状態が一時的に変化しています。元に戻るのを待つ意味があるため、続けて行っても進み方は変わりません。この考え方はホワイトニングの頻度は2段階で変わるで、費用の全体像はホワイトニングの値段はいくら?で扱っています。
自分の歯だとどこまで変えられるかは、診察で確認できます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
ホワイトニングの仕組みに関するよくある質問
歯を削っているのですか
削っていません。薬剤が歯の内部に浸透し、そこにある色素を化学的に分解しています。表面を研磨して汚れを落とす処置とは別のものです。ただし、強いブラッシングや研磨性の高いもので磨けばエナメル質はすり減るため、そちらは別に気をつける必要があります。
施術直後の白さが続かないのはなぜですか
見え方に関わる要素、つまり光の乱反射と歯の乾燥による分が、数日のうちに落ち着くためです。色素の分解による変化は残るので、施術前の状態に完全に戻るわけではありません。数日たった時点の色が、その回で得られた変化にあたります。
光を当てないと白くならないのですか
光は薬剤の反応を促すために使われるもので、光そのものが歯を白くしているわけではありません。光を使わない進め方もあります。自宅で行う方法では光を使いませんが、時間をかけることで作用させています。
市販の歯磨き粉と仕組みは同じですか
別のものです。歯そのものの色を明るくする作用のある薬剤は、歯科医師の管理のもとでしか扱えません。市販の歯磨き粉に期待できるのは、表面に付いた着色を落とすことと付きにくくすることで、歯の内部の色には届きません。詳しくは歯の黄ばみを取る方法で扱っています。
まとめ
ホワイトニングで歯が白く見えるようになる仕組みには、2種類あります。ひとつは、薬剤から生じた活性酸素が歯の内部の色素を分解する化学的な作用。もうひとつは、エナメル質の表層で光が乱反射することと、歯が乾燥することによる、見え方の変化です。
この2つは効いている時間が違います。見え方の変化は数時間から数日で落ち着き、色素の分解による変化が残ります。施術直後がもっとも白く見えるのは、この2つが重なっているためです。数日後に感じる「少し戻った」は、着色の再蓄積や加齢による後戻りとは別の現象です。
医院で行う方法も自宅で行う方法も、最終的にはたらく物質は同じ過酸化水素です。違うのは、濃度と作用させる時間の設計です。自分の歯でどこまで変えられるかは、口の中の状態によって決まるので、確認してみてください。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

