湯呑みの内側と同じように、歯にもお茶の色が残る。クリーニングに行けばきれいになるものの、数ヶ月するとまた同じところが茶色くなっている。研磨剤の入った歯みがき粉を強めに使ってみても、追いつかない。
この行き詰まりは、落とし方の問題ではないことがあります。湯呑みなら洗えば終わりで、翌日また同じ濃さから始まる心配は要りません。ところが歯のほうでは、付ける側の作業が毎日走っています。いま見えている濃さは、その差し引きの残りにあたります。
湯呑みと歯では、色が乗る相手が違う
「茶渋」は器の言葉です。湯呑みでは、釉薬の表面に色素が直接たまっていきます。
歯の場合、色が乗る先は歯そのものとはかぎりません。あいだに唾液からできた薄い膜があり、お茶に含まれる成分はその膜と結びつきます。この仕組みは着色が付く側の話で扱いました。
ここから、2つの違いが出てきます。
湯呑みは浸けられますが、歯は浸けられません。器なら漂白剤に沈めておけますが、口の中で同じことをする方法がありません。
湯呑みはこすれますが、歯は削れます。器の表面は硬く、多少こすっても形が変わりません。歯の表面のほうは、強く磨けばすり減ります。すり減った先で何が起きるかも、上と同じ回で触れています。
そしてもうひとつ。膜のほうは、落としても作り直されます。唾液からできるものなので、口の中にある限り、また同じ場所に同じものができます。落とす作業は、終わりのある片づけというより、繰り返しのなかの一手にあたります。
いま見えている濃さは、差し引きの結果
ここが本題です。歯の色の濃さには、逆向きの2つの流れが関わっています。
| 向き | 何が起きているか | 頻度 |
|---|---|---|
| 積む側 | 飲むたびに、色素が膜と結びつく | 1日に何度も |
| 落とす側 | 歯みがき、クリーニング | 1日に数回/数ヶ月に1回 |
見えているのは、この2つの差し引きです。落とす側が上回っていれば薄くなり、積む側が上回っていれば濃くなります。
そう考えると、クリーニングのあと数ヶ月で戻ることの見え方が変わります。あれは処置が効かなかったからではなく、そのあいだに積まれた分が見えてきたということです。落としたところから、また積み上がりが始まっているだけにあたります。
「落ちない」という悩みは、多くの場合ここで別の問題に置き換わります。落ちていないのではなく、落とす側が積む側に間に合っていない。そして間に合わせ方は、落とす力を上げること以外にもあります。
この見方には、確かめやすいという利点もあります。力を上げる対処は、効いているかどうかが分かるまでに時間がかかります。一方、積む側と落とす側のどちらを何回動かしたかは、その日のうちに数えられます。
動かせるのは3箇所
差し引きを変える方法は、大きく3つに分かれます。
ひとつ目は、積む量です。1日に口にする回数と、1回あたりの量。ここを減らせば積む側が小さくなります。ただし、生活の中では動かしにくい部分でもあります。
ふたつ目は、付いてから落とすまでの時間です。着色は付いた瞬間に固まるものではなく、置かれた時間の長さで固さが変わります。飲んだ直後に水を口に含むだけでも、色素が居座る時間を削れます。
3つ目は、落とす作業の間隔です。歯みがきの回数と、クリーニングに行く頻度。積む側が多い人ほど、間隔を詰める必要が出てきます。
ここで見落とされやすいのが、間隔は人によって違ってよいという点です。半年に一度という数字が広く言われますが、それは平均的な積み上がりを前提にした目安にすぎません。1日に何杯も飲む人が同じ間隔で通えば、そのあいだに積まれる量は違ってきます。
この3つのうち、ふたつ目は追加の手間がほとんどかかりません。すでに飲んでいる場面の直後に、水を口に含むだけです。動かしにくいひとつ目を無理に削るより、ここから始めるほうが続きます。
3つのうち自分に効きそうなのはどれか。飲み方と口の中の状態を突き合わせると見えてきます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
積む側は、量よりも回数で増える
ひとつ目の「積む量」について、もう少し踏み込みます。
積み上がりが起きるのは、色素が歯の面に触れているあいだです。触れている時間の合計で考えると、1回に飲む量よりも、口に入れる回数のほうが効いてきます。
同じ1日500ミリリットルでも、まとめて2回で飲む場合と、少しずつ8回に分ける場合とでは、色素が新しく供給される機会の数が4倍違います。しかも回数が多いほど、1回あたりの「飲んでから落とすまでの時間」が積み重なります。
デスクにマグカップを置いて、少しずつ飲みながら仕事をする。この飲み方は、量として見れば多くありませんが、積む側から見ると回数が伸びる形にあたります。
ここが分かると、減らす対象が変わります。総量を我慢するのではなく、だらだらと続く時間帯を区切るほうが、同じ効果を軽い負担で得られる場合があります。飲む場面をまとめて、そのあとに水を口に含む。これならひとつ目とふたつ目の両方に同時に効きます。
「やめる」は、3つのうち1つしか動かさない
お茶を控えるという対処は、ひとつ目だけに効きます。ふたつ目と3つ目はそのままです。
そして、続きにくいという問題もあります。長年の習慣になっているものを減らすのは、口をすすぐ動作を足すのとは負担が違います。効果が見えるまでにも時間がかかるため、途中でやめてしまえば元の状態に戻ります。
そもそも、控えたところで積む側がゼロになるわけでもありません。着色を起こすものはお茶に限らないからです。他に何が関わるかは着色の起きやすい飲みもので整理しました。
「やめるかどうか」で考えると、選択肢が2つになります。差し引きで考えると、動かせる箇所が3つに増えます。ここが実際の違いです。
同じお茶について、着色とは別の側面を調べた研究もある
お茶を「色を付けるもの」としてだけ見ていると、飲むこと自体をためらう方向に向かいます。ただ、同じ飲みものについて、別の性質を調べた研究もあります。
緑茶から抽出した成分が、歯の脱灰に対してどうはたらくかを調べたものです。抄録の冒頭に、前提としてこう書かれています。
in vitroおよびin vivoの多くの研究から,緑茶抽出物は茶葉に含まれるカテキンとフッ化物により抗菌性と抗齲蝕性を有することが示唆されている.
— 藤野富久江ほか「茶抽出物による歯質脱灰抑制」日本歯科保存学雑誌 50巻3号 302-312頁(2007年)
この記述を自分の湯呑みの話として読むには、条件が離れています。これは脱灰についての研究であって、着色を調べたものではありません。実験はウシの歯を用いて試験管内で行われたもので、口の中で同じことが起きるという話でもありません。そして対象は緑茶抽出物という調製されたもので、日常的に飲むお茶そのものとは違います。
ここから言えるのは、同じ飲みものが、着色とは別の軸でも調べられているというところまでです。飲むこと自体を悪いものとして扱う必要はない、という程度の位置づけになります。
対処するのは飲みものではなく、付いた色のほうです。
落としきれない分が残ったとき
差し引きの話には、続きがあります。落とす側でどうにもならない部分が出てくる場合です。
長く積み上がった着色は、歯みがきでは動きにくくなります。ここから先は歯科医院で落とす範囲に移ります。さらに、落としきったあとに残る色もあります。歯そのものの色は落とす対象の側にないので、いくら落としても同じままです。
つまり、鏡で見ている茶色さのなかには、落とせば消える分と、落としても残る分が混ざっている可能性があります。この2つは自分では見分けにくく、切り分けは診察の場になります。
落とせる分を落としきったあとで、まだ気になる色が残るなら、そこは明るくする側の話に移ります。どこまで動くのかという見込みの立て方は、明るくする処置で届く範囲で扱いました。
費用の考え方
落とす作業と明るくする処置では、費用のかかり方が違います。前者は歯科医院のクリーニング、後者は自由診療のホワイトニングです。
| 受け方 | かかる金額の水準 |
|---|---|
| 医院で受けるホワイトニング | 1回につき 2万円台〜5万円台 |
| 自宅で行うホワイトニング | 一式そろえて 2万円台〜5万円台 |
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。本記事で示す金額はいずれも一般的な費用の目安であり、特定の医院の料金ではありません。
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります
クリーニングのほうは、目的によって保険で受けられる場合があります。何がその分かれ目になるのかは保険の側の考え方に書きました。金額を横に並べる手順のほうは総額の出し方にあります。
落とせる分と残る分の切り分けから相談できます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
歯の茶渋に関するよくある質問
研磨剤入りの歯みがき粉を使えば落ちますか
落ちる分もありますが、強めに使い続ける方向は勧められません。表面がすり減ると、その先で色の見え方まで変わってしまうためです。落とす力を上げるより、間隔を詰めるほうが負担も軽く済みます。
緑茶と紅茶では違いますか
飲みものによって色素の量や性質は変わりますが、自分の口の中でどちらがどれだけ効いているかを分けて測るのは難しいところです。種類を選ぶより、飲んだあとの動作と落とす間隔のほうが動かしやすい部分です。
クリーニングはどのくらいの間隔で受けるものですか
積む側の量によって変わります。1日に何杯飲むか、飲んだあとにすすぐ習慣があるかどうか。ここを伝えたうえで、間隔を相談する形になります。一律の答えを当てはめると、自分の差し引きとはずれていきます。
一度きれいにすれば、しばらく持ちますか
持つ長さは積む側の量で変わります。飲み方が変わらなければ、前回と同じ速さでまた積まれていきます。逆に、飲んだあとの動作をひとつ足しておくと、次に濃くなるまでの時間が延びます。きれいにした直後は、飲み方を見直す機会にもなります。
前歯の裏側が茶色いのですが、自分では見えません
見えない面ほど、落とす作業も届きにくくなります。舌で触れて気になるなら、そこを伝えて見てもらうのが早い方法です。鏡で見える面だけを基準にすると、実際の積み上がりを見落とします。
まとめ
歯に残るお茶の色は、湯呑みの茶渋とは条件が違います。歯の側には唾液からできた膜があり、色はその膜と結びつきます。膜は落としても作り直されるので、片づけて終わりという形にはなりにくいところです。
いま見えている濃さは、飲むたびに積まれる分と、磨くたびに落とされる分の差し引きです。クリーニングのあとで色が戻ってくるのも、この関係で説明がつきます。ゼロに戻った地点から、積む側の作業がまた走り出しているだけの話です。
動かせる箇所は3つあります。積む量、色が置かれている時間の長さ、落とす作業の間隔。このうち飲んだあとにすすぐ動作は、手間がほとんど増えません。飲むのをやめる選択は、3つのうち1つにしか効かないうえに続きにくいところがあります。
そして、落としても動かない色は別の話にあたります。混ざったまま磨き続けるより、切り分けてもらうほうが早く進みます。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

