ホワイトニングで歯がもろくなるという話を目にして、迷っている。受けたい気持ちはあるけれど、歯は一生使うものなので、見た目のために構造を犠牲にするのは避けたい。そう考えている方は少なくありません。
この問いは、「もろくなる」か「ならない」かの二択では答えが出ません。研究の結果は、使う薬剤の濃度によって分かれているからです。ここでは、確認できた資料の中身と、その資料がどこまでを示しているのかという限定条件まで含めて見ていきます。
「もろくなる」という不安がどこから来るのか
まず、この話がどこから生まれているのかを整理します。
出どころのひとつは、仕組みそのものにあります。ホワイトニングの薬剤は、歯の表面のエナメル質を通り抜けて内部まで作用します。歯の内側にある色素を分解するためです。ただ、「歯の中まで薬剤が入る」と聞けば、歯そのものにも何か起きているのではないかと受け取られやすくなります。
もうひとつは、施術直後の見た目の変化です。歯が一時的に白く濁って見えたり、表面がザラついたように感じられたりすることがあります。これは薬剤の作用にともなう一時的な変化で、数時間から数日で元に戻るとされています。
ただ、体験としては「歯が変質した」という印象が残ります。実際に見た目が変わったわけですから、無理のない受け取り方です。この印象が「もろくなる」という話として広がっている面があります。
この論点はホワイトニングはしない方がいい?でも噂のひとつとして触れていますが、ここではもう一歩踏み込みます。
研究は濃度によって分かれている
エナメル質への影響を調べた研究には、エナメル質の微小硬度を測定するという方法があります。歯の表面の硬さを数値として比べる方法です。この指標で見た報告が2件あります。結果は、使った薬剤の濃度によって分かれています。
自宅用の10%程度について
Zanollaらによるシステマティックレビューおよびメタ分析があります。掲載誌は Australian Dental Journal、2017年の62巻3号276-282ページです。
この研究は、10%カルバミドペルオキシド(過酸化尿素)を使った場合のエナメル質の微小硬度を扱ったものです。7日間・14日間・21日間という3つの期間で調べた結果、微小硬度に統計的に有意な変化は見られなかったと報告されています。
10%程度の過酸化尿素は、国内で自宅用として使われている薬剤の代表的な濃度にあたります。
ここで押さえておきたいのが、この論文は実験室で行われた研究(in vitro研究)13編をまとめたものだという点です。人の口の中で長期間追跡した臨床試験ではありません。
高濃度について
もう1件は、Meloらによる研究です。掲載誌は BMC Oral Health、2022年の22巻645です。
こちらは37.5%の過酸化水素を使ったもので、8分間の処置を4回行っています。その結果、エナメル質の微小硬度は 260.2 HV から 212.5 HV へと低下しました。割合にすると 18.3%の低下です。表面の不整も増えたと報告されています。
ただし、この研究には続きがあります。再石灰化の処置を行ったところ、硬度は16〜33%増加し、初期の水準に近いところまで戻ったとされています。
こちらも実験室での研究です。ヒトの抜去歯を用いた実験にあたります。
この2件から言えること
整理すると、次のようになります。
低い濃度では、変化が検出されませんでした。 自宅用として使われる10%程度の過酸化尿素については、3週間まで使っても微小硬度に有意な差が出なかったという報告があります。
高い濃度では、一時的な低下が測定されました。 ただし、その低下は再石灰化によって元に近い水準まで戻ることも同じ研究で示されています。
そして、どちらも実験室での研究です。試験管の中と口の中では条件が違うため、この数値をそのまま自分の歯に当てはめることはできません。ここは限定として押さえておく必要があります。
言えるのは、「もろくなる/ならない」を濃度を抜きに論じても答えは出ない、ということです。
「歯が強くなる」という説明について
ホワイトニングによって歯が強くなる、という説明を見かけることがあります。この点についても触れておきます。
確認できた資料の範囲で示されているのは、低下した硬度が再石灰化によって元の水準に近いところまで戻るということです。元より強くなることを示すものではありません。
「戻る」と「強くなる」は別の話です。確認できた資料が示しているのは、前者までにとどまります。
安全性を確認したいという目的であれば、「元の水準に戻る」という点が押さえられていれば判断はできます。
唾液が果たしている役割
回復について、もう少し補足します。
歯の表面では、ミネラルが溶け出す脱灰と、補われる再石灰化が日常的に起きています。この再石灰化を担っているのが唾液です。唾液にはカルシウムやリン酸が含まれていて、歯の表面に補給する働きがあります。
先ほどの研究では、再石灰化剤を使って回復が確認されました。一方、口の中では唾液が常に働いています。実験室の条件とは、この点が違います。
つまり、実験室で測定された低下がそのまま口の中で続くとは限りません。逆に、実験室で確認された回復がそのまま起きるとも限りません。どちらの方向にも、そのまま当てはめることはできないということです。
なお、施術後しばらく飲食を控える時間があるのは、色の濃いものによる着色を避けるためですが、この時間帯を確保するという意味も持ちます。口が乾いた状態が続くと唾液の働きは弱まるので、水分をとることも役割を持ちます。
結果を分けるのは濃度と管理
研究が濃度によって分かれる以上、実際の分かれ目になるのはどの濃度を、どれだけの時間使うかです。
歯科医院で行う場合、この2つは設計されています。歯の状態を見たうえで濃度が決まり、それに対応する作用時間が指定されます。加えて、高い濃度を使う場合には歯ぐきを保護する処置が行われ、施術後の処置も組み合わされます。
一方、歯科医師の管理を離れて高い濃度の薬剤を入手して使う場合、この設計がありません。濃度に見合った時間の指定がなく、施術後の手当てもなく、状態を見て調整することもできません。研究で条件として設定されていた部分が、そのまま抜け落ちることになります。
もうひとつ、日本人はエナメル質が薄い傾向があるとされています。海外向けに作られた製品をそのまま使うと、前提としている条件が変わる可能性があります。
薬剤の扱いについてはホームホワイトニングのジェルとは?で、濃度が処方で決まる理由とあわせて扱っています。
自分の歯の状態に対してどの濃度が適切かは、診察で確認できます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
一時的な変化と、そうでないもの
ここまでの話を、判断しやすい形に整理します。エナメル質に起きる変化には、戻るものと戻らないものがあります。
戻るとされているもの
- 施術直後に歯が白く濁って見える
- 表面がザラついたように感じる
- 冷たいものがしみる
これらは薬剤の作用にともなう一時的な変化で、数時間から数日のうちに落ち着くとされています。しみる感覚についてはホワイトニングの知覚過敏は歯が傷んだのではないで仕組みと対処を扱っています。
戻らないもの
- 物理的にすり減って薄くなったエナメル質
こちらは薬剤による話ではありません。強い力で磨き続ける、研磨性の高いもので磨く、酸の強いもので磨くといった行為によって起きます。エナメル質は一度失われると再生しないため、この変化は元に戻りません。
そして、薄くなったエナメル質からは内側の象牙質の色が透けるため、かえって黄ばんで見えるようになります。この点については歯の黄ばみを取る方法で扱っています。
薬剤による一時的な変化と、削れて薄くなることは別の話です。混同されやすい部分なので、分けて理解しておくと判断しやすくなります。
費用と、始める前に確認しておくこと
費用の目安も挙げておきます。医院で行う施術は1回2万〜5万円程度です。自宅で行う方法は、マウスピースの作製と初回分の薬剤を合わせて2万〜5万円程度が一般的な目安とされています。
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。本記事で示す金額はいずれも一般的な費用の目安であり、特定の医院の料金ではありません。
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります
始める前に確認しておきたいのは、次の点です。
むし歯や歯周病がないか。エナメル質がすり減っている部分がないか。もともと冷たいものが響きやすくないか。これらは口の中を見てもらわないと分かりません。
そして、使う薬剤の種類と濃度、そして作用時間は、説明を受けられる項目です。気になる場合は聞いてください。研究結果が濃度で分かれる以上、自分が使うものが何なのかを知っておく意味があります。費用の考え方はホワイトニングの値段はいくら?で扱っています。
自分の歯の状態と、進め方の設計については診察で確認できます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
ホワイトニングと歯の強さに関するよくある質問
回数を重ねるほど歯が弱くなりますか
確認できた資料では、10%程度の過酸化尿素について7日・14日・21日という期間で有意な変化が見られなかったと報告されています。ただしこれは実験室での研究をまとめたもので、期間もそこまでです。それを超える長期の使用については、この資料からは何も言えません。指定された期間と間隔を守ることが前提になります。
施術後に歯がザラついて感じるのはなぜですか
薬剤の作用にともなって、歯の表面の状態が一時的に変化するためとされています。数時間から数日で元に戻ることがほとんどです。気になっても、この時期に強く磨くことは避けてください。かえって表面をすり減らすことになります。
市販品や個人で入手した薬剤でも同じですか
同じとは言えません。研究は特定の濃度・時間・条件のもとで行われたもので、その条件が変われば結果も変わります。歯科医師の管理を離れた使い方では、濃度に見合った時間の指定も、施術後の手当てもない状態になります。
子どもや若い年代でも影響は同じですか
年齢によって歯の状態は違うため、同じとは言えません。歯が生え変わる時期や、生えて間もない歯はエナメル質の状態が成人と異なります。年齢に応じた判断が必要になるため、対象になるかどうかを含めて確認してください。
まとめ
ホワイトニングで歯がもろくなるかどうかは、濃度を抜きにしては答えが出ません。確認できた資料では、結果が濃度で分かれていました。自宅用として使われる10%程度の過酸化尿素は、7日から21日の期間で微小硬度に有意な変化が見られなかったと報告されています。37.5%の過酸化水素では18.3%の低下が測定され、そのうえで再石灰化により元に近い水準まで戻ったとされています。
ただし、いずれも実験室で行われた研究です。口の中には唾液という再石灰化の働きが常にあるため、この数値をそのまま当てはめることはできません。
「歯が強くなる」という説明も見かけますが、確認できた範囲で示されているのは元の水準に戻ることまでです。実際の分かれ目になるのは、どの濃度をどれだけの時間使い、その前後にどう管理するかという設計の部分です。自分が使う薬剤が何なのかは、始める前に確認してみてください。
東京表参道矯正歯科のホワイトニング
通院の負担を抑えたい方に向けて、オンライン診療と自宅でのケアで進めるホワイトニングをご用意しています。3Dスキャンで採得した歯型からオーダーメイドのマウスピースを作成し、歯科医師の診断のもとでホワイトニング剤と知覚過敏抑制剤をお届けします。
- 診察はオンラインで完結。マウスピースをお持ちの方は来院いただく必要がありません
- 歯型に合わせたオーダーメイドのマウスピースで、薬剤を歯の隅々まで行き渡らせます
- しみる症状に備えた知覚過敏抑制剤を同梱。経過はLINEでご相談いただけます
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

