毎日きちんと磨いている。着色を落とすという歯磨き粉も使っている。それでも歯の色が変わらないので、もっと強い方法はないかと探している。そんな状態の方は少なくありません。
ただ、ここには前提のずれが潜んでいます。歯の黄ばみには、表面に付いていて取れるものと、歯そのものの色であって取れないものの2種類があります。後者は落とす対象ではないため、どれだけ念入りに磨いても色は変わらないままです。むしろ強い方法を試すほど、色が濃く見える方向に進んでしまいます。ここでは、その見分け方と原因ごとの対処を見ていきます。
黄ばみには「取れるもの」と「取れないもの」がある
まず全体像です。黄ばみは、何が起きているかによって2つに分かれます。
| 種類 | 何が起きているか | 対処の方向 |
|---|---|---|
| 表面に付いた着色 | 歯の外側に色素が付着している | 落とす(歯磨き・クリーニング) |
| 歯そのものの色 | 歯の内部の色が見えている | 明るくする(薬剤を使う) |
大切なのは、この2つで行為そのものが違うという点です。表面に付いた着色は落とせますが、歯そのものの色は落とすものではありません。歯の内側にある色が透けて見えている状態なので、外側から擦っても届かないからです。
「黄ばみを取る」という言い方は、このうち片方にしか当てはまりません。そこに気づかないまま全部を落とそうとすると、行き詰まります。
磨いても取れないとき、多くの方は磨き方や道具を疑います。ただ、原因が後者であれば、磨き方をどう変えても結果は変わりません。磨き方の問題ではなく、種類の問題かもしれません。
取れる黄ばみ ― 表面に付いた着色
まず、落とせるほうから見ていきます。
歯の表面は、ペリクルと呼ばれる薄い膜で覆われています。唾液に由来するもので、歯を守る役割を持っています。ただ、この膜には色素が結合しやすいという性質もあります。
コーヒー・紅茶・赤ワイン・カレーなどに含まれるポリフェノールがこの膜と結びつくと、着色として残ります。タバコを吸う場合は、タールが同じように結合します。これが表面に現れる黄ばみの正体です。
時間が経つほど落としにくくなる
ここで押さえておきたいのが時間の要素です。付着した直後であれば歯磨きで落とせますが、半日から1日ほど時間が経つとこびりつくとされています。
つまり同じ着色でも、対処のタイミングによって自分で落とせるかどうかが変わります。「毎日磨いているのに落ちない」という場合、磨く回数ではなく、着色してから磨くまでの時間が関係していることがあります。
歯垢が歯石になると落とせなくなる
もうひとつ、磨き残した歯垢が唾液の成分と結びついて固まると、歯石になります。歯石は歯ブラシで落ちるものではありません。歯石そのものも黄ばんだ色をしているため、歯の色として認識されます。
歯垢が残った状態が続くと、エナメル質が溶けて黄ばんで見えることもあります。この場合も、原因は表面側にあります。
まとめると、表面の着色は早く対処すれば自分で落とせる/時間が経つと歯科医院の領域になるという性質を持っています。
取れない黄ばみ ― 歯そのものの色
次に、落とせないほうです。
歯の色は、表面のエナメル質と、その内側にある象牙質の重なりとして見えています。エナメル質は半透明なので、内側の象牙質の色が透けて見えるためです。象牙質はもともと黄色みを帯びています。
この構造から、いくつかの原因が生まれます。
生まれつきの色。 エナメル質の厚みには個人差があります。日本人は欧米人と比べてエナメル質が薄い傾向があるとされ、その分だけ象牙質の色が透けやすくなります。もともとの色が濃いめであれば、それは汚れではありません。
加齢による変化。 年齢とともにエナメル質はすり減って薄くなり、一方で象牙質の色は濃くなっていきます。両方向から進むため、透けやすさが増していきます。
神経を失った歯。 歯の内部から変色が進むため、外側からのケアでは届きません。1本だけ色が違う場合、これに当てはまることがあります。
テトラサイクリンという抗菌薬の影響。 歯が作られる時期にこの薬を服用したことによる変色で、縞模様のような見え方をすることがあります。
虫歯の進行。 進行した虫歯は歯の色を変えます。この場合は色の問題ではなく治療の対象です。
これらはいずれも、表面に付いているものではありません。だから磨いても取れません。対処するとすれば、落とすのではなく明るくする方向になります。到達点の決まり方についてはホームホワイトニングの効果はどこまで?で扱っています。
取ろうとして悪化させる典型
落とせない色を落とそうとすると、次のような流れに入ることがあります。ここが、黄ばみへの対処でもっとも気をつけたい部分です。
磨いても取れない → もっと強く磨く、研磨性の高いもので磨く → エナメル質がすり減る → 内側の象牙質がより透ける → さらに黄ばんで見える → もっと強い方法を探す
エナメル質は一度失われると元には戻らない組織です。つまりこの流れは、進むほど戻しにくくなります。以下、避けたい方法を挙げます。
強く磨く、硬い歯ブラシを使う
力を入れて磨いてもエナメル質の表面をすり減らすだけで、内部の色には作用しません。歯ぐきが下がる原因にもなり、下がった部分は根元が露出してさらに色が濃く見えます。
重曹や塩で磨く
どちらも粒子による研磨で汚れを落とす方法です。研磨性が高いため、繰り返すと歯を傷つけるとされています。表面に傷が付くと、そこに色素が入り込みやすくなります。
レモンなど酸の強いもので磨く
酸は歯を溶かします。一時的に表面の着色が薄く見えることがあっても、エナメル質そのものが失われるため、虫歯のリスクが高まるとされています。
台所用のメラミンスポンジでこする
歯の表面に細かい傷ができ、細菌が増えやすくなるとされています。そもそも歯に使うことを想定した道具ではないためです。
なお、表面に塗って色を隠す方法もありますが、こちらは塗った面に凹凸ができるため、汚れが付きやすくなる点に注意が要ります。
共通しているのは、表面を削るか溶かすかしているという点です。落ちて見えるのは表面が削られているからで、色の原因が解決したわけではありません。
自分の黄ばみがどちらの種類かは、口の中を見てもらうと判別できます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
自宅でできること
削らずにできることもあります。いずれも表面の着色に対してできることで、歯そのものの色には届きません。
着色しやすいものを口にしたら、時間を置かずに口をすすぐ。 前述のとおり、着色は時間とともに固着していきます。食後すぐに水で口をすすぐだけでも、色素が留まる時間を減らせます。歯を磨けるならなお良いのですが、外出先ではすすぐだけでも違ってきます。
歯磨き粉は研磨剤の量に気をつけて選ぶ。 着色を落とす成分を含むものもありますが、研磨性が高いものを毎回使うとエナメル質への負担になります。何を使うかは、歯の状態に合わせて相談すると選びやすくなります。
力ではなく毛先で磨く。 歯ブラシの毛先を歯の面に当て、細かく動かします。力を入れると毛先が寝てしまい、かえって当たらなくなります。
歯と歯のあいだも落とす。 着色は歯の側面にも付きます。歯間ブラシやフロスを使わないかぎり、この部分は残ったままです。
口の乾燥に気をつける。 唾液には歯の表面を洗い流す働きがあります。口が乾いた状態が続くと着色が付きやすくなるため、水分をとる、よく噛むといったことが対策になります。
歯科医院でできること
自分の黄ばみがどちらの種類かを判別したうえで、対処が分かれます。
クリーニング ― 表面の着色と歯石を落とす
専用の器具を使って、歯ブラシでは落とせない着色や歯石を落とします。歯そのものの色を変えるものではなく、本来の色に戻す処置です。表面に原因がある場合は、これで気にならなくなることもあります。
ホワイトニング ― 歯そのものの色を明るくする
過酸化水素や過酸化尿素を使って、歯の内部の色素を分解します。本来の色より明るくする処置であり、表面を削って対応するものとは仕組みが違います。取れない種類の黄ばみに対しては、こちらが対処の方向になります。
進め方は、医院で受ける形と自宅で行う形に分かれます。それぞれの進み方はオフィスホワイトニングとは?とホームホワイトニングとは?で扱っています。
費用の目安を挙げます。自宅で行う方法はマウスピースの作製と初回分の薬剤を合わせて2万〜5万円程度、医院で行う施術は1回2万〜5万円程度とされています。
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。本記事で示す金額はいずれも一般的な費用の目安であり、特定の医院の料金ではありません。
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります
なお、詰め物・被せ物・差し歯・インプラントは薬剤では明るくなりません。前歯に人工物がある場合は、扱いを先に決めておきます。費用の考え方はホワイトニングの値段はいくら?で整理しています。
自分の黄ばみの原因と、どこまで変えられるかは診察で確認できます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
歯の黄ばみに関するよくある質問
毎日しっかり磨いているのに黄ばむのはなぜですか
原因が磨いて落とせる種類ではないのかもしれません。生まれつきの色や加齢による変化は歯の内部の話なので、磨いても変わらないままです。もうひとつ、表面の着色であっても、付いてから時間が経つと歯ブラシでは落ちにくくなります。どちらに当てはまるかは診察で判別できます。
市販の歯磨き粉で歯そのものの色を明るくできますか
歯そのものの色を明るくする作用のある薬剤は、歯科医師の管理のもとでしか扱えません。市販の歯磨き粉に期待できるのは、表面の着色を落とすことと、付きにくくすることです。表面に原因がある場合には役割がありますが、内部の色には届きません。
クリーニングとホワイトニングはどちらを先にやりますか
クリーニングが先です。表面に着色や歯石が残っていると、薬剤が歯の面に均一に届かず、色の入り方に差が出ます。また、クリーニングだけで気にならなくなる場合もあるため、順番として先に行います。
黄ばみが虫歯のサインということはありますか
進行した虫歯によって歯の色が変わることはあります。1本だけ色が違う、部分的に濃くなっているといった場合は、色の問題ではなく治療が必要な状態のことがあります。この場合は治療が先になります。
まとめ
歯の黄ばみには、表面に付いていて落とせるものと、歯そのものの色であって落とせないものがあります。前者はペリクルという膜に色素が結合したもので、付いた直後なら歯磨きで落とせますが、時間が経つとこびりつきます。後者は生まれつきの色や加齢による変化などで、磨いても取れません。
注意したいのは、落とせない色を落とそうとして強い方法を試すことです。エナメル質がすり減ると内側の象牙質がより透けるため、かえって黄ばんで見える方向に進みます。エナメル質は元に戻りません。
自分の黄ばみがどちらの種類かは、口の中を見てもらえば判別できます。種類が分かれば、落とすのか明るくするのか、対処の方向が決まります。強い方法を試す前に、まず原因を確かめてみてください。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

