テトラサイクリンは抗菌薬(抗生物質)の一種です。この薬による歯の変色には、「難しい」という言葉がついて回ります。ただ、その先まで説明されていることは少なく、そこで止まってしまいがちです。
まったく変わらないのか、時間をかければ届くのか。この幅が分からないままだと、試す価値があるのかどうかを決められません。
先に整理しておくと、「効かない」というより、色のある場所が違うという話です。場所が違うので、変化の速さと届く範囲が変わります。そして判断には順番があり、削らない方法で届く範囲を先に確かめることができます。
色がある場所が違う
まず、通常の着色との違いからです。
| 色がある場所 | 薬剤との関係 | |
|---|---|---|
| 飲食物などによる着色 | 歯の表面から外側の層に、あとから付いたもの | 分解の対象になりやすい |
| テトラサイクリンによる変色 | 歯が作られる段階で、内部に取り込まれたもの | 薬剤が届くまでに距離がある |
なぜ内部に入るのかについては、次の機序が示されています。
テトラサイクリン系抗生物質が金属イオンとキレートを作成するため、テトラサイクリン-リン酸Ca複合体が、石灰化が進行中の歯に沈着して着色を起こすと考えられている
— 公益社団法人 福岡県薬剤師会 薬事情報センター(2013年)
つまり、歯が硬い組織として作られていく過程で、色のもとが構造の中に取り込まれた状態です。あとから表面に付いた汚れとは、成り立ちが違います。
この違いが、変化の出方に効いてきます。薬剤は歯の表面から作用します。色が表面に近いところにあれば、そのぶん早く見た目に出やすくなります。反対に色が歯の奥のほうにある場合は、同じ薬剤を同じ時間使っても、変化が分かるまでに時間がかかる傾向があります。
ここから言えるのは、「効く/効かない」の二択で考える対象ではないということです。薬剤が作用する仕組みそのものは変わりませんが、色までの距離が違うため、変化の速さと到達点が変わります。薬剤が色を変える仕組みそのものはホワイトニングの仕組みで扱いました。到達点を決めているのは薬剤ではなく歯の構造で、この点はホームホワイトニングの効果はどこまで?が詳しく扱っています。
どの時期の服用が関係するのか
次に、いつの話なのかです。ここは公的な文書に記載があります。
テトラサイクリン塩酸塩の添付文書には、小児等への投与について次のようにあります。
他の薬剤が使用できないか、無効の場合にのみ適用を考慮すること。小児(特に歯牙形成期にある8歳未満の小児)に投与した場合、歯牙の着色・エナメル質形成不全、また、一過性の骨発育不全を起こすことがある。
— アクロマイシン末(テトラサイクリン塩酸塩)添付文書(2024年7月改訂・第2版)
「歯牙形成期にある8歳未満」とあるとおり、関係するのは歯が作られている時期の服用です。歯の石灰化は、乳歯では妊娠4ヶ月から生後11ヶ月頃まで、永久歯では8歳頃まで続くとされています(前掲・福岡県薬剤師会)。
裏を返すと、この仕組み——歯が作られる段階で色のもとが取り込まれること——は、すでにできあがった歯には起こりません。起きるとすれば、歯を作っていた時期にさかのぼる話になります。
もうひとつ、引用の冒頭にあるとおり、小児への使用は限定的に扱われています。ほかに使える薬があるならそちらを先に、という位置づけです。
つまり、いま子どもに同じことが起きる前提で考える必要はありません。すでに変色がある方にとっては、過去の服用によるものとして整理できます。
自分がそうかどうかは、見た目だけでは決まらない
ここで問題になるのが、自分が本当にそうなのか分からないという点です。子どもの頃の服薬を覚えている方は、ほとんどいません。
手がかりは3つあります。
時期。 歯が作られていた年代にあたるかどうかです。ただし記録が残っていないのが普通なので、これだけでは決まりません。
出方。 1本だけに出るのではなく、同じ時期に作られた複数の歯に、同じように出るという特徴があります。特定の1本だけが変色している場合は、別の原因を考えます。
見え方。 全体に色がついている場合もあれば、帯状に濃い部分が見える(縞模様のような見え方をする)場合もあります。程度には幅があり、うっすらと感じる程度から、はっきり分かる状態まで開きがあります。
ただし、似た見え方をする原因はほかにもあります。歯そのものの色が濃い場合や、別の要因による変色もあるためです。取れる色と取れない色の見分け方は歯の黄ばみを取る方法にまとめました。
手がかりを持っていくと診察が早く進みますが、確定するのは口の中を見てもらってからです。
着色とは別に、確認しておくこと
先に引用した添付文書には、「歯牙の着色・エナメル質形成不全」と2つが並べて書かれていました。ここは分けて見ておく必要があります。
着色は、色の話です。歯の内部に色のもとが取り込まれた状態を指します。
エナメル質形成不全は、歯の表面の作られ方の話です。エナメル質が十分に作られなかった状態で、色ではなく構造の問題にあたります。
この2つは別のもので、片方だけのこともあれば、両方が関わることもあります。
ここからは添付文書の話ではなく、ホワイトニングの側の話です。エナメル質形成不全は、ホワイトニングを受けられない場合として一般に挙げられる条件のひとつにあたります。薬剤を作用させる前に、歯の表面の状態を確認しておく項目です。
つまり、色の濃さだけで決まるものではありません。表面の状態しだいで、進められるかどうかも、進め方も変わります。
ホワイトニングでどこまで見込めるか
ここが知りたいところだと思いますが、程度によって変わるとしか言えません。断定できる性質のものではないためです。
そのうえで、決まり方は説明できます。
変化は通常よりゆるやかになる傾向があり、期待どおりに明るくならないこともあります。前に見たとおり、色までの距離があるためです。同じ方法を同じ期間続けても、飲食物による着色が主な原因の場合とは進み方が変わります。
どこまで届くかは、歯そのものの条件で決まります。エナメル質の厚みや、内側の象牙質の状態によって変わる部分です。
目標をどこに置くかを先に決めておくと、判断しやすくなります。「白くなったかどうか」を印象で判断すると、変化があっても気づきにくくなるためです。現在地と目標を色見本の上に置く方法はホワイトニングのレベルに、期待の置き方はホワイトニングの後悔にまとめています。
なお、医院で受ける方法と自宅で行う方法を組み合わせる形が、選択肢として挙がることがあります。考え方はデュアルホワイトニングとは?にあります。
自分の場合にどこまで届きそうかは、口の中を見てもらうと具体的になります。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
判断は、削らない方法から順に
程度が重い場合の方法としてよく挙がるのが、歯の表面を覆う方法や、削って被せる方法です。
これらは選択肢として実際にあります。ただし、そこへ進む判断には前提が2つあります。
ひとつは、程度の判定そのものが診察を要すること。自分の変色がどのあたりにあるのかは、鏡を見ても決まりません。ここまで見てきたとおり、原因の確定も、歯の表面の状態も、口の中を見てもらわないと決まりません。
もうひとつは、歯を削る処置は元に戻せないこと。削った部分は戻らないため、判断のやり直しがききません。
この2つを踏まえると、順番が見えてきます。元に戻せる方法、つまり薬剤で明るくする方法でどこまで届くかを先に確かめるという順番です。
なお、表面の状態によっては、薬剤で明るくする方法そのものが適さない場合もあります。この順番で進められるかどうかも、最初の診察で分かることのひとつです。
先に試したからといって、あとの選択肢がなくなるわけではありません。届く範囲を確認したうえで、それで足りるのか、別の方法を検討するのかを決められます。次にどの時点で進むかも、届いた範囲を見てから決められます。判断の材料が増えた状態で次に進めるということです。
なお、覆う方法や削る方法については、進め方も、かかる期間も、状態によって変わります。担当する医院で確認する内容にあたるため、ここでは扱いません。
診察で確かめておく5つのこと
テトラサイクリンによる変色の場合、聞いておくとあとの判断が楽になる項目が決まっています。順に挙げます。
自分の変色がテトラサイクリンによるものか。 見え方と、歯が作られていた時期の状況から確認してもらいます。手がかりを持っていくと、話が具体的になります。
どこまで届く見込みか。 見込みには幅があるので、その幅そのものを聞いておきます。どのあたりまで進んだところで一度見直すのかも、あわせて聞いておきます。開始前に共有しておくと、後で照らし合わせられます。
どれくらいの期間を見ておくか。 通常よりゆるやかに進む傾向があるため、期間の見込みを先に聞いておきます。あわせて、薬剤を使う方法では進めている間に歯がしみることがあります。出方や対処はホワイトニングの知覚過敏にまとめました。
費用がどう決まるか。 続ける期間が延びれば、そのぶん総額も変わります。金額そのものより、何をどれだけ続けると総額がどうなるかという構造を聞いておくと、あとで見直すときの判断ができます。費用の見方はホワイトニングの値段はいくら?にあります。
※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)で、費用や含まれる範囲は医院ごとに異なります。
途中で見直す時点を決めておく。 ある時点まで進めて変化が乏しい場合にどうするか、を先に決めておく形です。これがあると、続けるかどうかの判断が感覚に頼らずに済みます。
このうち、覆う方法や削る方法を検討する段階では、担当する医院が判断の窓口になります。
自分の変色がどういう性質のもので、どこまで見込めそうかは、診てもらうと具体的になります。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
テトラサイクリン歯のホワイトニングに関するよくある質問
市販のホワイトニング歯みがき粉では変わりませんか
市販の歯みがき粉が対象にしているのは、表面についた着色です。テトラサイクリンによる変色は歯の内部にあるため、届く場所が違います。表面の着色が混ざっている場合はその分の変化を感じることもありますが、内部の色は別の対処になります。見分け方は歯の黄ばみを取る方法にあります。
服用した記録が残っていません。確認する方法はありますか
記録がないことを前提に進みます。対象になるのは子どもの頃の服用なので、当時の記録が手元にある方はまれです。診察では歯の側から確認していくため、思い出せなくても支障はありません。当時のことを家族に確認できる場合は材料が増えますが、分からないまま相談して構いません。
帯状に見える部分だけを消せますか
薬剤で明るくする方法は、特定の部分だけを選んで作用させるものではありません。全体に作用するため、濃い部分と薄い部分の差が残ることがあります。この差をどう扱うかは、目標を決める段階で相談して決めます。
変化が乏しいかどうかは、どう判断すればいいですか
「変化が乏しい」という判断自体を、いつ・何を見て下すのかが分かれ目になります。開始前の記録と見比べないかぎり、進んでいないのか、ゆっくり進んでいるのかは区別できません。毎日鏡で見ていると、緩やかな変化ほど気づきにくくなります。だからこそ、開始前に記録を取り、見直す時点を先に決めておく形が役に立ちます。そのあとどう進めるかは、削らない方法から順に確かめるという考え方で整理できます。
まとめ
テトラサイクリンによる変色が「難しい」とされるのは、色のある場所が違うためです。飲食物による着色が表面から外側に付くのに対し、こちらは歯が作られる段階で内部に取り込まれています。薬剤が届くまでの距離があるぶん、変化はゆるやかになる傾向があります。
関係するのは、歯が作られていた時期の服用に限られます。いま子どもに新たに起きることを前提に考える必要はありません。
自分がそうかどうかは、出方や見え方に手がかりはあるものの、見た目だけでは決まりません。
そして、程度が重い場合の方法として覆う方法や削る方法が挙げられますが、削る処置は元に戻せません。まず元に戻せる方法でどこまで届くかを確かめてから次を考えると、判断の材料が増えた状態で進められます。
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※ホワイトニングは自由診療(保険適用外)です。
・治療内容:マウスピースを用いたホームホワイトニング
・標準的な費用:初月22,000円(税込/マウスピース作成を含む)、2ヶ月目以降11,000円/月(税込)。マウスピースをお持ちの方は初月11,000円(税込)
・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

