通販のサイトにも、歯科医院の案内にも、ホワイトニング用のライトが出てきます。どちらも青く光り、添えられている説明も似た形をしています。それでいて、どれを選べばよいのかという段になると、手がかりが見当たりません。
光がしている仕事は、1つではありません。2つあって、どちらが効いてくるかは組み合わせる材料の側で分かれています。ライトを並べて見比べても手がかりが出てこなかったのは、そのためです。
同じ呼び名が、2つの場所で使われている
ホワイトニングライトという呼び名は、離れた2つの場所で使われています。ひとつは通販に並んでいる家庭用の機器、もうひとつは歯科医院で口元に向けられる装置です。
この言葉は特定のメーカーの製品名ではなく、複数の会社の機器がまとめてこう呼ばれています。歯科の現場では、光照射器という呼び方をします。
見た目にも近いところがあります。ペン型で少しずつ当てるものと、口全体を覆う形のもの。どちらの形も、通販と医院の両方にあります。
そのうえ、添えられている説明も似ています。光が薬剤にはたらきかける、という形の説明です。
医院の案内でも扱いは分かれます。使っている機器を挙げているところと、光にまったく触れていないところがあります。どちらの書き方も見かけるので、その差が何を指しているのかは、案内を読み比べても出てきません。
では、この光は何にはたらきかけているのか。ここを追っていくと、比べ方そのものが2つに分かれてきます。
光がしている仕事は、1つではない
日本のオフィスホワイトニング材について、次の記載があります。
わが国のオフィスホワイトニング材は、すべて光照射を必要としている。
— 大槻昌幸ほか「歯科の審美治療―歯のホワイトニング―」日本レーザー医学会誌46巻1号29-38頁(2025年)
この論文は総説です。国内で扱われている材料と照射器を、う蝕制御学と歯科保存学を専門とする大学の研究者らが整理したものにあたります。
まず読み取れるのは、国内のオフィス用の材料については、光照射が付け足しの工程ではないという点です。材料の使い方として、はじめから組み込まれています。
そのうえで、光がしている仕事が2つに分かれます。
| 光がはたらきかけている先 | |
|---|---|
| ① | 塗られた材料そのもの。温まることで、過酸化水素が分解する速度が上がる |
| ② | 材料に加えられた光触媒。光を受けて反応する |
①について、論文は光照射によって材料が加熱され、過酸化水素の分解反応の速度が増すと記しています。分解によって生じたものが色素にはたらくので、その手前の速さを上げるという位置づけです。
②は、すべての材料にあるわけではありません。論文は、触媒を添加することでホワイトニング効果の促進を図っている材料もある、という書き方をしています。この「もある」が、あとで効いてきます。
その触媒がすべて光に反応するわけでもありません。論文が光照射と結びつけて説明しているのは、光触媒のほうです。②の経路が成り立つのは、光触媒が入っている材料の場合ということになります。
過酸化水素そのものの区分や濃度についてはオフィスホワイトニングの薬剤にまとめました。
紫外光と可視光では、届く先が違う
①の経路には、光の種類による差があります。
紫外光では過酸化水素の分解を促進して、漂白効果の増加が期待できるが、現在、用いられている照射器のほとんどは可視光であり、可視光での過酸化水素の分解はあまりない。
— 大槻昌幸ほか(前掲)
過酸化水素の分解がよく進むのは紫外光のほうだとされています。ところが実際に使われている照射器は、そのほとんどが可視光です。つまり、目に見える範囲の光です。
②の光触媒にも、似た事情があります。論文は一般的な性質として、酸化チタン光触媒は紫外光に反応し、可視光にはほとんど反応しないと記しています。
そこで材料の側が変えられました。可視光にも応答するように改良された酸化チタン光触媒を使っている材料があります。可視光の照射器に合わせて、触媒のほうを作り替えたという形です。
つまり、同じように見える光が当たっていても、その先で何が起こるかは材料の作りによって変わります。光の側だけを眺めていても、そこまでは追えません。
材料によって、見るべき数字が入れ替わる
ここから、ライトの比べ方が2つに分かれます。
一方、酸化チタン光触媒を含まないオフィスホワイトニング材では、光照射による発熱量が漂白効果に大きな影響を及ぼすと考えられるので光の波長よりも、放射照度が重要になる。
— 大槻昌幸ほか(前掲)
整理すると、次のように分かれます。
| 材料の側 | ライトについて重要になるもの |
|---|---|
| 光触媒を含む | 波長(どの色の光か) |
| 光触媒を含まない | 放射照度(どれだけ強い光か) |
放射照度は光の強さを表す量で、日常の言葉なら明るさが近いところにあります。
光触媒を含む材料では、なぜ波長のほうが重要になるのか。理由に挙げられているのはLEDの性質です。LED光源は、以前に使われていたハロゲン光などに比べて波長の幅が狭い。幅が狭いぶん、どの波長が出ているかが結果に効いてきます。
一方、光触媒を含まない材料には、②の経路がありません。残るのは①の加熱による分解なので、どれだけ強い光を当てるかのほうが影響します。
同じライトを前にしていても、見るべき数字は波長と明るさで入れ替わります。
しかもこの入れ替わりは、材料の側から起きています。ライトの仕様表をどれだけ細かく読んでも、組む材料が分からなければ、どちらの数字を見ればよいのかが確定しません。
手がかりが出てこなかったのは、調べ方が足りなかったからではありません。比べる軸のほうが、まだ立っていなかったためです。
照射のしかたにも、2通りある
照射器には当て方の違う2つの型があり、論文はそれぞれの一般的な使い方を記しています。
単歯用は、歯を少数ずつ照らす型です。放射照度が大きいため、材料を塗ってから照射するのは短い時間だけで、あとは光を当てずに待ちます。
アーチタイプは、多数の歯にまとめて光を当てる型です。こちらは6分から12分程度、連続して照射します。
優劣ではなく、照射のしかたの違いとして並べられています。
医院によって光を当てている時間が違って見えるとしたら、この使い分けにあたる可能性があります。長く当てているから強い、短いから弱い、という読み替えはできません。
1回の施術で時間がどう配分されるかはオフィスホワイトニングの時間に、工程の並び全体はオフィスホワイトニングとは?にあります。
当てる光にも当て方にも、材料に応じた条件がある
当て方が2通りに分かれるとして、当てる光のほうは選べるのか。ここにも、材料に応じた条件があります。
論文は、いま主流になっているLEDの光源について、その波長を紫から青の範囲としています。そのうえで、酸化チタン光触媒を含有するホワイトニング材については、低波長の可視光を使うよう指示されていると記しています。
つまり、光触媒を含む材料と組む場合、当てる光にはあらかじめ条件が付いています。明るさや色を見比べて選ぶという手順ではありません。
当て方についても同じです。論文によれば、歯科用漂白剤として国内で製造・販売の承認を受けているものは5製品です。照射の条件は、それぞれの添付文書に記されています。どの型の照射器で何分当てるのかも、その記載にそろえることになります。
どの材料と組む施術になるのかは、方法そのものを決めたあとの話です。その手前から相談できます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
この総説が扱っている範囲
ここまで見てきたのは、国内で流通している医院用の材料と照射器についての記載です。範囲を確かめておきます。
論文が対象にしているのは、わが国のオフィスホワイトニング材と、それに使う光照射器です。ホームホワイトニング材について光照射に触れた記載は、この論文には見当たりません。
そして、通販で売られている家庭用の機器は、この総説の対象の外にあります。
そのため、商品ページにある仕組みの説明が、ここで見た2つの経路と同じものを指すのかどうかは、この論文の範囲の外に出ます。
自宅で行う方法で光を使わない件についてはホワイトニングの仕組みが扱っています。医療機関以外の施術で使われる成分はセルフホワイトニングの効果にまとめました。
ホワイトニングのライトに関するよくある質問
ハロゲンの照射器とLEDの照射器では、何が違いますか
論文が挙げているのは、出る光の幅の違いです。かつて使われていたハロゲン光は幅の広い光を出しますが、現在主流のLEDでは、その幅が狭くなっています。幅が狭ければ、含まれる波長も限られます。
明るいライトほど良いという見方はできますか
光の強さのほうが効いてくるのは、光触媒を含まない材料の場合だと論文は記しています。含んでいる材料については、当てる光の波長が重要になるとしています。
アーチタイプと単歯用では、どちらが多く使われていますか
現在ではアーチタイプの照射器が普及しつつある、と論文にあります。ただし普及の度合いと、自分が受ける施術でどちらが使われるかは別の話です。どちらの型で当てるかは、組む材料の記載によって変わってきます。
レーザーを使うホワイトニングはありますか
論文には、各種レーザーのホワイトニングへの応用が検討されてきているものの、わが国では実用化に至っていないとあります。理由として挙げられているのは2つです。装置が高額であること、そして、レーザーの特徴である高いエネルギー密度が現在のホワイトニングでは不要であることです。
なお論文は、可視光での過酸化水素の分解が少ない点について、レーザー光でも同様と考えられると付け加えています。光の種類を変えれば①の経路が強まる、という単純な関係にはなっていません。
どの方法が合うのかは、歯や歯ぐきを診てもらってから絞れてきます。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
まとめ
ホワイトニングで当てられる光には、2つのはたらきがあります。ひとつは材料を温めるはたらきで、過酸化水素の分解を速めます。もうひとつは、材料に加えられた光触媒を反応させるはたらきです。触媒は、入っている材料と入っていない材料があります。
この違いが、ライトの見方を2つに分けます。材料に光触媒が入っていれば、どの波長かが重要になります。入っていなければ、どれだけ強い光かのほうが影響します。同じ機器を前にしても、見る数字が入れ替わるということです。
そのため、機器の仕様だけを突き合わせても、優劣の判定までは進みません。見るべきものは、光の側ではなく材料の側にあります。
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