医院でホワイトニングを受けると、歯の表面に何かを塗られて、光を当てられて終わります。何を使われたのかを尋ねる機会がないまま帰ってくることも珍しくありません。
出回っている説明は「過酸化水素」「高濃度」といった言葉で止まりがちです。その濃度が高いのか低いのか、判断する基準までは示されません。そして「薬剤」と呼ばれているのに、処方箋が出ることもありません。
先に整理しておくと、この「薬剤」は法律上の区分では薬ではありません。ここが分かると、処方箋が出ない理由も、医院でしか扱えない理由も説明がつきます。そのうえで、濃度の数字を単独で読まずに済む見方も決まります。
「薬剤」と呼ばれているものの、法律上の区分
まず区分からです。一般社団法人 日本歯科審美学会は、次のように記載しています。
現在、歯の漂白(ブリーチ)効果が学術的に認められているものは、いずれも過酸化物からなるホワイトニング剤を使用する方法で、医薬品医療機器等法(旧薬事法)上、医療用具(歯科材料)とされており、歯科医師または歯科衛生士の資格を持たない者がこれを用いて施術する事は違法行為になります。
— 一般社団法人 日本歯科審美学会「歯のホワイトニングについて」
注目したいのは、医薬品医療機器等法上、医療用具(歯科材料)という部分です。
つまり日常的に「薬剤」と呼ばれているものは、制度の上では歯科材料にあたります。詰め物や被せ物に使う材料と同じ系統に置かれている、ということです。
そう分かると、いくつかのことが説明できます。
処方箋という形をとらないのは、そもそも医薬品の枠にないためです。医院で使われるか、診査を経て渡されるかのいずれかで、薬局で受け取る流れには乗りません。
受け方の違いも、この区分と合わせて見ると整理できます。医院で受ける方法は、その場で使って完結する形です。自宅で行う方法では薬剤を受け取ることになりますが、これも診査を経て渡されるものです。
医院でしか受けられないのも、同じ記載から説明がつきます。引用の後半にあるとおり、この材料を用いて施術できる人は資格で定められています。
効果が認められているのは、過酸化物によるもの
もうひとつ、同じ記載から読み取れることがあります。漂白の効果が学術的に認められているのは、過酸化物からなるホワイトニング剤による方法だとされている点です。
医院で受ける方法で使われるのは、過酸化水素です。自宅で行う方法では過酸化尿素が代表的で、こちらは口の中に入ってから過酸化水素へと変化します。
つまり、成分の名前は違っても、歯にはたらく段階では同じ物質になっています。この変化のしかたと、それがどう色にはたらくのかはホワイトニングの仕組みが詳しく扱っています。
ここから、医療機関以外で受けられるものとの線引きも見えてきます。過酸化物からなる薬剤を用いて施術できるのは、資格を持つ人に限られています。そのため資格を持つ人がいない場所で受けられるものは、別の成分による処置ということになります。セルフホワイトニングの効果に、届く範囲がどう違うのかをまとめました。
濃度の数字だけでは、強さが決まらない
次に濃度です。ここが評価しにくいところだと思います。
医院で使われる過酸化水素の濃度は、おおむね15%から35%程度とされることが多くなっています。自宅で使う過酸化尿素は10%程度が一般的とされ、そこから生じる過酸化水素はもとの濃度のおよそ3分の1にあたります。
この2つを並べると、見た目の数字の差より実際の差は大きくなります。35%と10%なら3.5倍に見えます。ただし10%の過酸化尿素から生じるのは3〜4%程度なので、実際には10倍前後の開きがあります。
ただし、ここで止めると誤解が残ります。濃度が高いこと自体が、強さを意味するわけではありません。
実際に決まるのは、次の3つの組み合わせです。
| 要素 | 意味 | |
|---|---|---|
| ① | 濃度 | 1回あたりにどれだけの量がはたらくか |
| ② | 作用させる時間 | どれだけの長さ当てるか |
| ③ | 回数 | 何回繰り返すか |
濃度が高いほど、作用させる時間は短く設計されています。高い濃度を長時間当てるという組み合わせにはなりません。自宅で行う方法がその逆で、低めの濃度を長めに使う形になります。
③の回数も、この設計の一部です。1回で終わらせるために濃度を上げる、という組み合わせは取られません。
そして、この3つの組み合わせは、受ける側が動かせるものではありません。「濃度を上げてほしい」という要望が通らないのは、時間や回数まで含めた設計から外れてしまうためです。
つまり濃度の数字は、時間や回数とセットで見ないと意味を持ちません。単独で取り出して比べられる数字ではないということです。1回にかかる時間の内訳はオフィスホワイトニングの時間に、回数がどう決まるかはオフィスホワイトニングとは?にあります。
濃度が高いことで変わるのは、扱いの条件
では濃度が高いことは何を意味するのか。効果の大きさではなく、扱いの条件のほうに表れます。
高い濃度のものを使う場合、そのぶん管理の工程が組まれます。歯ぐきを保護してから塗る、時間を計って進める、といった手順です。
保護の工程が入るのは、作用させたい相手が歯だけだからです。濃度が高いほど、歯以外に触れたときの刺激も大きくなります。塗る範囲を限って、当たる時間も決めておく。この2つがそろって、はじめて高い濃度を使えます。
医院の中で、資格を持つ人が扱う形になっているのも、この管理が前提にあるためです。
体感として出ることがあるのが、しみる感覚です。これは薬剤が歯の内部にはたらく過程で起こるもので、多くは一時的とされています。ホワイトニングの知覚過敏に、その仕組みと段階ごとの対処があります。
ふだん冷たいものがしみると感じているなら、始める前に申し出ておきます。その申し出は要望ではなく口の中の情報なので、その日に使う濃度と当てる時間をどう組むかの材料になります。
国内で承認されているものと、そうでないもの
引用のとおり、ホワイトニング剤には医薬品医療機器等法上の区分があります。そして国内で承認を受けているものと、そうでないものがあります。
これはどちらが良い・悪いという話として扱うより、確認できる項目のひとつとして持っておくほうが実用的です。
国内で承認を受けているものは、国内の基準で品質や安全性が確認されているという位置づけになります。裏を返すと、承認を受けていないものについては、その確認を経ていないということです。
自分が受けるものがどちらなのかは、聞けば確認できます。
聞く場面は、カウンセリングの段階です。施術が始まってからでは、その日の内容には反映しにくくなります。方法や回数の説明を受けるときに、あわせて聞いておく形になります。
聞き方も難しくありません。「国内で承認を受けているものですか」で足ります。
そして、どちらの答えでも、なぜそれを使っているのかまで聞いておくと、判断の材料がそろいます。理由まで聞けると、その薬剤がどういう位置づけで選ばれているのかが分かります。
薬剤について確認できること
ここまでを踏まえて、確認できることを整理します。
前提として、薬剤は自分で選ぶものではありません。口の中の状態や目標によって決まるためです。そのうえで、聞いておける項目があります。
- どういう区分のものを使うのか(国内で承認を受けているものかどうか)
- 主成分と、おおよその濃度
- 1回にどれくらいの時間作用させるか
- しみやすさへの対応があるか
このうち濃度と時間は、セットで聞いておきます。濃度だけでは評価できないためです。
回数がここに入っていないのは、同じ設計でも決まる時点が違うためです。濃度と時間は医院が扱う薬剤の設計なので事前に聞けますが、回数はもとの色と目標を見てからになります。先に濃度と時間を押さえておけば、回数の説明を受けたときに全体像がつながります。
なお、説明を求めることは、施術の質を疑うことではありません。使うものを把握したうえで進めたい、という確認として扱われる内容です。
薬剤の中身を把握したうえで方法そのものを決める段階なら、選び方の手順はホワイトニングのおすすめはどれ?にまとめました。
聞いた答えを自分の場合にどう当てはめるかは、口の中を見てもらうと決まります。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
オフィスホワイトニングの薬剤に関するよくある質問
使われた薬剤の名前を教えてもらえますか
聞けば分かる内容です。ただし、名前を控えるより区分と主成分、おおよその濃度、作用させる時間を控えるほうが実用的です。製品の名前だけでは、受けた処置がどういう設計だったのかまでは分からないためです。名前が同じでも、当てる時間や回数が違えば別の処置になります。
市販のホワイトニング用品とは何が違いますか
漂白の効果が学術的に認められているのは過酸化物によるものだとされており、その施術は資格のある人に限られています。市販品はこれにあたらないため、対象にしているのは表面についた着色です。届く範囲の違いはセルフホワイトニングの効果にまとめています。
濃度が高いほうが早く白くなりますか
濃度だけでは決まりません。濃度・作用させる時間・回数の3つがセットで設計されていて、濃度が高いものは作用させる時間が短くなります。どこまで届くかは歯そのものの状態によっても変わるため、濃度の数字を比べても見込みは出ません。
自宅で行う方法とは薬剤が違いますか
主成分の名前は違います。ただし自宅用のものは口の中で変化して、医院で使うものと同じ物質になります。変化のしかたはホワイトニングの仕組みが扱っています。自宅用のジェルの保管や期限についてはホームホワイトニングのジェルとはにあります。
歯の状態によって向く方法は変わります。どれが現実的かは、一度診てもらうところからです。オフィスホワイトニングの詳細はこちら
まとめ
医院のホワイトニングで使われるものは、日常的に「薬剤」と呼ばれています。ただし日本歯科審美学会は、医薬品医療機器等法(旧薬事法)上、医療用具(歯科材料)とされていると記載しています。処方箋という形をとらないのも、医院でしか受けられないのも、この区分から説明がつきます。
漂白の効果が学術的に認められているのは過酸化物によるもので、医院では過酸化水素、自宅では過酸化尿素が代表的です。名前は違っても、歯にはたらく段階では同じ物質になります。
濃度はおおむね15%から35%程度とされますが、数字だけでは強さが決まりません。濃度・時間・回数の3つがセットで設計されていて、濃度が高いものほど作用させる時間は短くなります。
確認できるのは、区分・主成分と濃度・作用させる時間・しみやすさへの対応の4つです。選ぶものではありませんが、聞いておくと受ける処置の輪郭がつかめます。
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・主なリスク・副作用:施術中や施術後に歯がしみる(知覚過敏)、歯ぐきの一時的な白濁や刺激感、時間の経過にともなう色調の後戻りが生じる場合があります
・受けられない場合:無カタラーゼ症の方、妊娠中・授乳中の方、未治療の虫歯や重度の歯周病がある方などは受けられない場合があります
・効果の感じ方や必要な期間には個人差があります

